シンギュラリティサロン#21 石川 幹人「人工知能の当面の限界とその克服への展望~心理学と生物学の視点から」

日時 2017年03月12日(日)13:30- 18:00
場所 グランフロント大阪・ナレッジサロン内プレゼンラウンジ(ナレッジキャピタルへのアクセスはこちらを、施設内のナレッジサロンへのアクセスはこちらをご参照ください)

講演1(13:30-14:30)
「人工知能の当面の限界とその克服への展望~心理学と生物学の視点から」 石川 幹人 (明治大学情報コミュニケーション学部教授)

【概要】
 最近の人工知能技術の進展はめざましい。将来人間が機械に支配されてしまうのではないかという恐れさえも表明されている。その恐れは1980年代の人工知能ブームの時にもささやかれたが、その後は「恐れるに足らず」としりぞけられた。今回もまた結局のところしりぞけられるのだろうか、それともこんどは本当に恐れるにふさわしいのだろうか。
 本講演では、1980年代に指摘された人工知能の限界のうち、何が克服されて何が克服されていないのかを解説する。また残された限界を克服する方向性について展望を述べる。

休憩(14:30-14:40)

講演2(14:40-15:40)
「疑似科学とされるものの科学性判定~超心理学の事例に注目して」 石川 幹人 (明治大学情報コミュニケーション学部教授)

【概要】
 自然科学は長足の進歩をとげ、農業や工業を通して我々の生活向上に貢献してきた。科学的方法やその成果は高く評価されるべきだろう。だが、科学の先端では、その成果はまだ不確定で揺らいでいる。確実性が高まるまでやたらに利用してはいけない。しかし、検証が不十分なサプリメントが、科学の装いのもとに売られている実態がある。
 本講演では、科学の装いをもっているだけで科学とは言えない「疑似科学」を見抜く方法を紹介する。一部、超心理学の研究テーマをとりあげながら、科学的方法を人間や社会に展開する場合の難しさについて触れる。

【講師プロフィール】
 1959年東京生まれ。東京工業大学理学部応用物理学科卒。同大学院物理情報工学専攻、松下電器産業(株)マルチメディアシステム研究所、(財)新世代コンピュータ技術開発機構研究所などをへて、1997年に明治大学文学部に赴任し、現在同大学院情報コミュニケーション研究科長。東京農工大学大学院工学研究科物質生物工学専攻にて論文博士(工学)拝受。専門は認知情報論および科学基礎論。2002年デューク大学に客員研究員として滞在。2013年国際生命情報科学会賞、2015年科学技術社会論柿内賢信記念賞などを受賞。現在「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」を運営。主な著書に、『入門・マインドサイエンスの思想~心の科学をめぐる現代哲学の論争』(共編著、新曜社、2004)、『心と認知の情報学~ロボットをつくる・人間を知る』(勁草書房、2006)、『人間とはどういう生物か~心・脳・意識のふしぎを解く』(ちくま新書、2012)、『超心理学~封印された超常現象の科学』(紀伊國屋書店、2012)、『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』(PHP新書、2016)などがある。

休憩(15:40-15:50)

パネルディスカッション(15:50-17:00)
「先端科技術と疑似科学問題」

【概要】
 先端科学技術を一般市民に向けて発信する場合に、その不確実さが適切に伝わらない問題点がある。研究者が夢を抱きながら研究を続けている途上にあるものが、確固たる成果ですぐに利用できるもののように感じられてしまう。またそれがビジネスに悪用されることもある。研究段階と利用段階を分離した「科学コミュニケーション」の確立について議論したい。

石川幹人、田中嘉津夫(岐阜大学名誉教授)、松田卓也(神戸大学名誉教授)、高橋昌一郎(國學院大学教授、司会)

懇親会(17:00-18:00)

第2回シンギュラリティシンポジウム ①「シンギュラリティへの道」松田卓也

今からちょうど2年前に、ナレッジサロンで「シンギュラリティサロン」を始めた。シンポジウムは今回が第二回。第一回は昨年7月に開催し、PEZY computing社の齊藤元章さんに来て頂いた。今回はWBAI(全脳アーキテクチャイニシアチブ)の山川さん、高橋さん、そして駒澤大学の井上講師、経済産業省産業再生課課長の井上さんと、豪華な顔ぶれ。井上講師は昨年末、「100人」(註:『日経ビジネス』(日経BP社/2016年12月19日号)の連載特集「次代を創る100人」)の1人に選出された。「100人」の顔ぶれは他にトランプ大統領、プーチン大統領、メルケル首相、安倍首相だ(会場笑)。

【超知能の定義】
私のシンギュラリティの定義は「超知能のできるとき」だ。そこにおられる(註:神戸大学大学院工学研究科教授でシンギュラリティサロン共同発起人の1人)塚本先生が私の一冊目の人工知能についての著書の中にある、「人工知能が人間の能力を超えるとき」という定義は間違いだとおっしゃる。私はそれに同意している。では超知能とは何か?「人間ひとりよりも圧倒的に高知能な存在」だ。ではこれは機械なのか?知能増強された超人間なのか?私は後者だと考えている。(塚本先生を指さし)ヘッドマウントディスプレイを装着されたあの姿(会場拍手、笑)。あのスマートウォッチ、7本も付けてはるんですよ(会場笑)、まさに超人間です(笑)。人工知能が科学をやるというよりも人間と人工知能が融合して科学をやる、これがAI駆動科学だ。高橋さんがこの先駆者ですでに会社を作っている。これから世界が変わる。科学技術が圧倒的に進歩し生産性も圧倒的に向上する。ユートピアが訪れ人間は働かなくてよくなる。

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第2回シンギュラリティシンポジウム ⑥ パネルディスカッション「日本からシンギュラリティを起こすには〜その具体的な方策」 

ファシリテータ:塚本昌彦 (神戸大学大学院工学研究科教授)
パネリスト:松田卓也、山川宏、高橋恒一、井上智洋、井上博雄 (以上、登壇順)

塚本:シンギュラリティサロンの発起人の1人の塚本です。
シンギュラリティサロンの活動が2年、このシンギュラリティシンポジウムは第二回ということで、シンギュラリティについていろいろな議論をしている。今日は「日本からシンギュラリティを起こす」というテーマで議論したい。パネリストのお手元には、〇×札とスケッチブックをお配りしている。いくつか設問を用意しているので、それに一斉に答えていただきディスカッションを進める形式でいきたい。

Q.0 シンギュラリティとは何か?

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第2回シンギュラリティシンポジウム ③「人類を再発明するのに必要な事=第五の科学・AI駆動型科学」高橋恒一 

私は人工知能をつくるという研究と、それを使って何かをやるという研究の両方をやっています。今回でシンギュラリティサロンでお話させて頂くのは3回目となります。少々抽象的な話もありますが、これまでの二回とは少し違った切り口からお話をさせて頂きます。

【総務省・AI開発ガイドライン(案)について】

今、総務省の情報通信政策研究所・AIネットワーク社会推進会議で「AI開発ガイドライン」のたたき台を作成しています(全脳アーキテクチャ関係者では、ドワンゴ山川さん・東大松尾さん・電通大栗原さんなどもメンバー。本日の講師の駒大井上さんも。)。去年のG7情報通信担当大臣会合や伊勢志摩サミットでも議題にして頂き、今OECDで国際合意に向けた議論が始まっています。先々週はWashington DCで開催された日米シンポジウム(主催は日本国大使館、米国側はカーネギー財団)に私もパネリストとして参加し、「異例に盛況」な盛り上がりの中、非常に協力的な雰囲気を作ることが出来、AIの分野で今後の日米のパートナーシップはどうあるべきかなどを議論しました。

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第2回シンギュラリティシンポジウム ④「シンギュラリティを問い直す -技術的特異点と経済的特異点-」 井上智洋

技術的特異点の諸説は、知能爆発の提唱から起こった
まず、技術的特異点について私の考えをお話ししたい。私は普段は経済成長理論、貨幣経済理論を扱っている経済学者である。人工知能についても副業として論じていて、昨年「人工知能と経済の未来」という本を出版し、日経の「次代を創る100人」に選ばれた。本業の本は売れていないのに、副業の人工知能の本のほうがよく売れている(笑)。技術的特異点(シンギュラリティ)には諸説あり、ムーアの法則型は未来学者のカーツァイルが紹介して広く知られている。カーツァイル自身はポストヒューマン型を提唱した。私は「知能爆発」のほうがシンギュラリティの元来の意味であった気がしていて、これはI・Jグッド、ヴァーナー・ヴィンジが提唱した。シンギュラリティを最初に公に提示したのも、知能爆発も、ヴァーナー・ヴィンジから始まっていると見たほうがいい。汎用AIが成立すると知能爆発が起こるとする説もあるが、そう簡単に超AIに至るわけではないのではないか?というのが今日の話だ。

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第2回シンギュラリティシンポジウム ⑤「国づくりに人工知能をどう活かすか?—新産業構造ビジョン—」 井上博雄

本日は貴重な機会を頂きありがとうございます。第四次産業革命で世界を日本がどうリードするか、今、政府が取り組んでいることをご紹介したいと思います。私が所属する経済産業省産業再生課では、人工知能、第四次産業革命にどう対応していくかの戦略づくりを担っています。
去年の9月から官邸に「未来投資会議」が結成され、国を挙げて人工知能や第四次産業革命に取り組まなければいけないと議論が始まっています。これまでの先生方のお話は未来を見据えた長期のお話ですが、私が今日お話しする内容は、その未来を手にするために目の前でやるべきことは何か、政府として取り組むべき事は何かということです。検討中の事項が多くありますので、皆様からのご意見を是非とも頂きたいと思います。(詳細はスライド資料をご参照)

参照スライド【アベノミクス成長戦略は、今どこにいて、何が求められているのか?】

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シンギュラリティサロン#20 塚本 昌彦 「ポケモンGOからシンギュラリティへ」

日時 2016年12月10日(土)13:30- 15:30
場所 グランフロント大阪・ナレッジサロン内プレゼンラウンジ

講演概要
今年はポケモンGOが突然世界的な大流行となった。その後下火になったものの、地理情報サービス、AR、ウェアラブルデバイスなど、これまで多くの企業がトライアルし、玉砕されてきた次世代情報サービスへのステップを一気に切り崩した。実はこれは将来のシンギュラリティへつながる大きなステップとみなすこともできる。本講演では、ポケモンGOが人類にもたらした大きなステップを分析し、シンギュラリティへとつながる今後の可能性について解説を行う。もしかしたら人類を超える知能を持ち、いつか人類を支配する脅威となるのは全地球に生息するポケモンとなるのかもしれない。

シンギュラリティサロン#19 山﨑 匡「ヒト全小脳リアルタイム シミュレーションを目指して」

2016年10月15日、グランフロント大阪・ナレッジサロンで開催されたシンギュラリティサロンで電通大による山崎匡さんの小脳の実時間シミュレーションの講演が行われましたが、とても興味深い素晴らしいものでした。

会場は一杯で講演後に熱い質疑応答がかわされ、その後も講師との個別の議論が続きました。

小脳は脳全体に占める体積では10%だけですが、ニューロンの数では80%と圧倒的です。大脳皮質は6層であるのに対して、小脳は3層で浅いが、それをニューロンの数で補っているようです。小脳はニューラルネットの言葉で言えば、リキッドステートマシンと呼ばれるものに相当します。

山崎さんの発表は、ネコ程度の細胞数の小脳の実時間シミュレーションについてです。解くべき基礎方程式はニューロンの電位を決める非常に具体的な常微分方程式で、時間的に積分します。スパイキングニューロンモデルです。小脳は大脳と違って、マスターアルゴリズムがよく分かっているので、非常に現実的なシミュレーションができます。

計算は理研にある2ペタフロップスの齊藤スパコンの菖蒲を1週間走らせました。モデル小脳に運動学習をさせるために必要な時間です。講演では具体的なコード、齊藤スパコンで速く走らせるための工夫など、生々しい話も紹介されました。結果は素晴らしいもので、世界最大規模であり、また実験結果をうまく再現します。

話を聞いて受けた感想は、日本の小脳科学は世界の第一線を走っているというものです。そのことは小脳のレビュー論文を調べてもわかります。第一人者の伊藤正男先生は87歳にして現役で論文を書いておられるそうです。大いに励みになります。英語で論文を書くことが、世界の評価につながります。この点は人工知能学界の研究者が心すべきことです。

2018年にはできるであろう最高速度260ペタフロップスの齊藤スパコンを用いて、ヒト小脳の実時間シミュレーションをする予定だそうです。その先は2019年に予定されている1エクサフロップスの齊藤スパコンを用いた、大脳のシミュレーションでしょう。EUに先駆けて全脳シミュレーションをすることも夢ではありません。

(報告:松田 卓也)

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*講演資料:

シンギュラリティサロン #18 倉重 宏樹「知識:その神経科学,その意義,その進化」

講演
2016/09/18 (日)
13:30-15:00「知識:その神経科学,その意義,その進化」
15:00-15:30 自由討論

講師 
倉重 宏樹(電気通信大学大学院情報理工学研究科研究員)

定員 100名(先着順・入場料無料)

※ご来場の際はナレッジサロン受付けで、シンギュラリティサロンに参加される旨、お伝え下さい。

講演概要
人類の歴史は知識の発展の歴史であるといっても過言ではない.我々は個人のレベルでも,また人類コミュニティのレベルでも,外界からの情報や脳の内部で創成した情報を,知識として構造化して発展させてきた.このような知識の発展は,しかしながらただ無作為的に情報が蓄積する過程ではない.多くの神経科学や心理学の知見は,知識がいかに発展するかについての法則性を明らかにしつつある.本講演では,それらの知見を概観した後,とくに脳の作動原理としての最適化という観点から,知識の発展過程を記述しうる理論を模索したい.さらにこれを踏まえ,知識発展のテクノロジーによる増進の可能性を,とくに人工知能との共創という観点から議論したい.

主催
シンギュラリティサロン

共催
株式会社ブロードバンドタワー、一般社団法人ナレッジキャピタル

第1回シンギュラリティシンポジウム ⑤「次世代を生きる僕たちが創るもの」佐久間洋司

今日は錚々たる登壇者の中に混ざって、どうして一介の学生が講演をするのかと疑問に思っている方も多いのではないかと思います。しかしながら、本日お越しいただいた皆さんは、特に150名の学生の皆さんは、僕の話だけを聞いて帰ればいいのかもしれないという理由が一つあります。シンギュラリティが起こるという2045年に生きているのは、今日の登壇者で僕だけかもしれないということです。

「新しい時代を作るのは老人ではない!」という名言があります。誰が言ったかというと、シャア・アズナブル(ガンダム)の言葉だそうです。でもこの台詞ですら、僕たちはリアルタイムで聞いたことのない世代なのです。今日は僭越ながら、そんな世代を生きる学生の一人として、シンギュラリティに向けて一つの提案をさせて頂こうと思っています。
その基本となるアイデアは、学生自身が自分たちの未来について考えなければいけないというものです。その日を、シンギュラリティを迎えた時、大人は誰も責任は取ってくれないかもしれないのです。
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