シンギュラリティサロン@東京#14開催のお知らせ

シンギュラリティサロン@東京「第14回公開講演会」を、次の通り開催します。

日時 2016年10月22日(土) 13:30-15:30
場所 ジーニアスセミナールーム(東京都千代田区神田和泉町1-12-17 久保田ビル5F)
題目
13:30-15:00 「脳科学とエンハンスメント その可能性と倫理」 美馬達哉(立命館大学大学院先端総合学術研究科・教授)
15:00-15:30 自由討論

定員 100名(先着順)
※入場料無料 

講演概要

人間の脳の働きについての理解が深まるにつれて、たんに脳の働きを観察するだけでなく、脳の働きを変化 させるテクノロジーへの関心が高まっている。もっとも初期から存在したのは物質としての脳そのものに物理的に介入する手法、すなわち 外科手術であった。その次には、薬剤を使って化学的に脳に介入する手法が開発された。二〇世紀の後半以降では、電磁気学的な手法で脳 の神経細胞の活動に介入する手法が着目されている。そうした歴史を踏まえつつ、こうした脳介入の医学治療的使い方と能力増強(エンハンスメント)目的での使い方を紹介し、その未来と倫理的問題点について考える。

共催
株式会社ブロードバンドタワー

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第1回シンギュラリティシンポジウム ⑦ パネルディスカッション「本当に日本からシンギュラリティを起こせるのか?」

要約

 まず文部科学省の栗原潔氏から「政府の研究開発施策について」と題した話題提供があった。本シンポジウムのテーマであるシンギュラリティにも関連が深い分野である革新的人工知能研究を推進する体制の立ち上がりを示す政策に関する説明があり、大規模なICT分野のプロジェクトとして文科省がいままで本格的には参入していなかった分野とも言われるが昨年の概算要求により本年度54.5億円の予算措置がなされており、並行して国際的な研究活動への参画・ベンチャーエコシステムの確立等も重要、という認識が示された。

 政府系シンクタンクによる概算では、民間企業の関連予算規模では、日本は数千億円程度、米国は数兆円程度という現実があり、これらの現状を打破するべく、本年4月に総理指示による司令塔「人工知能技術戦略会議」が発足。これは産学のトップを構成員とする政府主導のAI技術戦略の司令塔で、総務省・文部科学省・経済産業省の三省連携体制が着実に進展している旨の説明があった。

 文科省予算の筆頭項目として、新規予算54.5億円としてAIPプロジェクト(人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト)が措置され、国立研究開発法人理化学研究所にAIPセンターが発足し、国立研究開発法人科学技術振興機構からは若手研究者向けのものを含む複数のファンディング制度が新たにスタートした。AIPプロジェクトの創設により、政府各府省の関連する研究開発投資規模は今春から100億円以上と概算される。米国には及ばないもののGDP規模等から比較すれば一定の水準は確保することが出来たとも考えられるとのこと。

 この講演を受けて松田先生から、政府が覚醒した、日本の指導層(政治家・高級官僚・大企業・マスメディア)が覚醒しないといけない、とのコメントがあった。

次に塚本先生がモデレーターご担当のパネルディスカッションに移った。

テーマ1「シンギュラリティの定義」ではモデレーターの塚本先生から、シンギュラリティは1つの仮説であって複数の考え方があり、否定的な意見もあることが説明された。松田先生からは汎用人工知能の1H(読み方:いちえいち、H=ヒューマン)が達成されることがプレシンギュラリティである、との見解が示された。齊藤氏は1Hは我々の脳内に存在するし、実在が目視できるものを人間は必ず乗り越えていく。1Hができないという理由が解らないと断言。石田氏からは、実業界では未来と同義で人工知能が語られているという指摘があった。栗原氏からはシンギュラリティという単語を否定してはいけないと思う。多様な科学技術・学術を支援するなかの1つとして、シンギュラリティも否定されないものと位置付けた。佐久間氏からは定義が不明かつ何が起こるかも不明なままこうして議論することが怖い、という印象があるというコメントがあった。TAの現場で学生たちにヒアリングした際も、「怖い」という回答だったという。塚本先生はシンギュラリティを語る上ではSF小説的な要素が多いので、人にうまく説明することもシンギュラリティを起こすために必要と締められた。

テーマ2「シンギュラリティに向けての現状」では、国の政策や世界と日本の現状について具体的なデータが示された。例えば論文数の比は57(米国):18:(EU)8(中国):2(日本)。米国対日本では約30対1。中国対日本では4対1。米国と日本の民間企業の予算は6兆と3000億で20対1。AAAI(トリプルAI:Association for the Advancement of Artificial Intelligence)によると、論文数は2012年のヒントンのVRC発表後に米国は倍増、中国は3倍、日本は横ばい。深刻なのは国別の共著関係で、中国は米国と非常に近い位置。日本の計算機科学/数学の論文数はこの10年で世界8位から20位に転落した。齊藤氏からは日本の優秀な人的資源の有効活用が急務だとの指摘があった。石田氏からは英国が蒸気機関による産業革命を進める際、機械を破壊する組合員の暴動に対して処刑者が出た史実が語られ、省庁連合による施策の推進を期待する言葉があった。佐久間氏からは今がどん底なら上がるしかないので学生自ら中国の80倍の論文数に挑みたい、と次世代としての思いが語られた。

テーマ3「日本の強み」では、齊藤氏のスパコンが上位独占の事実が挙げられる一方、類似したアーキテクチャを持つ中国の猛追が脅威であるとの発言があった。松田先生からは情報技術と工学分野の研究者も、論文は英語で発表することが重要。そうやって世界発信することはシンギュラリティと連動している、との問題提起があった。栗原氏からは例えば日本の強みである材料系と組み合わせた技術の成果もあり、基礎医学系・再生医療等とも結び付くことで日本の強みが発揮できるのではないか、との示唆があった。石田氏からは人工知能ありきのアルゴリズムが一度導入されれば、そこからの突破は速いと思うという展望が語られた。佐久間氏からは日本の強みと学生をつなぐ場を作るのがAIR。文科省も若手に予算を付けてくれており、そのうち日本の新しい強みが出てくるのではないか、というコメントがあった。

テーマ4「今後のプランならびに展望」では、松田先生はハードは齊藤さんのマシンがあり、日本が世界一。問題はソフトで、これは圧倒的に米国と英国が強い。一番必要なのは気概、やる気。人の能力に大差はない。若者のやる気と同時に大人がそれをバックアップすることが大切である、とした。齊藤氏からは人工知能とスパコン開発の戦いで負けるわけにはいかない。人工知能とスパコンを組み合わせた最強の科学技術基盤を確立し、仮説検証。これが回り出すと、論文が何百万本も出てくるという。人間には書けない論文だらけになり、学会も人間があまり参加しなくなるとした。石田氏は会社の経営基盤が安定したら、現在取り組んでいる言語に限らず画像や創薬ベンチャーにも挑む。非定形なところまで順番に実現していきたい、と意気込んだ。

 栗原氏からは、今年は理化学研究所のAIPセンターの設置と、科学技術振興機構の新たなファンディングが開始されたがこれを継続して拡充したい。例えば、我が国が良質なデータを有するコホート研究との連携等も可能性がある、また、塚本先生から言及のあったポケモンGOについても我が国独自の文化的・社会的背景等も寄与しており科学技術の研究開発だけで無く多様で魅力のある文化を育むことも重要との指摘もあった。我が国のマクロ的な課題が生産年齢人口の減少である中で、多様な背景を持つ方々が生き生きとした生活を実現し「一億総活躍」してもらうことがシンギュラリティにも一歩つながる、と語った。佐久間氏からは、これからヒントン教授のいるカナダのトロント大学に9カ月留学する。学生は気概が全てというところがあるが、日本人は潜在的に気概があると思うという発言があった。

最後に「シンギュラリティを起こすために」、として松田先生からの「気概を持て」のひとことで締められた。

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パネルディスカッション発言要旨

1.「シンギュラリティ」の定義

塚本先生(モデレーター):シンギュラリティは「ひとつの仮説」、複数の考え方がある。

松田先生:当面、達成するべきは汎用人工知能、1H。マスターアルゴリズムの解明並びに齊藤氏のスパコン利用によって達成可能。これが「プレシンギュラリティ=1人分」。

塚本先生:齊藤氏の話では科学技術の発展をスパコンが支える図式、これがプレシンギュラリティ。

松田先生:アメリカの「マイクロン計画」は、1ミリ立法メートルの脳細胞内のコネクトームの全解明を目指すという。同時にこれをシュミレートするアルゴリズムの構築も可能だという。数年でできると思う。

齊藤氏:「収穫加速の法則」のように、半導体に関してムーアの法則が終焉するとしても、それを補う新たな法則が生まれる。さほど長い時間もかからずコネクトームにまで到達するのが1つ。我々の脳内に1Hはある。実在しないものを創るのは難しいが存在が目視できるものに関して、人間は必ずそれを乗り越えていく。できないというほうの理由が解らない。

塚本先生:シンギュラリティは、経営者の間でも語られているか?

石田氏:人工知能は「未来」とほぼ同義で語られている。実現したらそれはもう未来とは誰も言わない。日常生活に小さいシンギュラリティは起こっている。AIコールセンターも「プチ」シンギュラリティ。それらが積層していき飽和点になれば、シンギュラリティの到来を一般の人も初めて感じるのではないか。

栗原氏:「シンギュラリティ」という単語自体は否定するべきものではない。例えば、iPS細胞研究でノーベル賞を受賞された山中伸弥先生が最初に「ヒトの分化した細胞を初期化し、万能細胞を創ることを目指す」として研究を始められた時には、iPS細胞は存在しなかった。新しい発見を行い新しい分野を開拓する方々は、新しい概念を提唱してそこを目指すもの。文科省としても、多様な幅広い学術分野に対して支援をしていきたい。

塚本先生:省内としても今後くるかもしれない1つの仮説、という見方でよいのか。

栗原氏:様々な科学技術分野を幅広く支援し、芽が出てくればそこを重点的に支援する中の1つ。

佐久間氏:シンギュラリティができないとは思わないが、「すごく怖い」と思っている。松田先生の1Hの意味ではできると感じる。シンギュラリティの定義すら良く解らない中で、何が起こるのかも全く不明。よくわからない議論を今ここでしているのが怖い、という印象や感想が多いのではないか。

塚本先生:不老不死、マインドアップローディング、宇宙の創生などSF小説的な話がかなり含まれているため、うまく説明をしないと人に不審がられてしまう。シンギュラリティを起こすための動きには、「説明の仕方」も重要なのではないか。

松田先生:第二の大分岐は人類レベルの話であって、国レベルの話ではないといわれるが現実的には国レベルの話。1Hの達成で決まる。齊藤さんの意見はハード・テイクオフ。2029年に1Hが達成できて、2045年に100億Hができるといっているのがカーツワイル。1H達成後に、人によっては1年、1週間後に100億H達成というが齊藤さんはあっという間だという。

齊藤氏:瞬間だと思う。

2.シンギュラリティに向けての現状

塚本先生:国の政策や、世界と日本の現状について。

松田先生:数字だけで見ると絶望的。技術論文の比は57(米国):18:(EU)8(中国):2(日本)。米国対日本では約30対1。中国とでは4対1。米国と日本の民間企業の予算では6兆と3,000億で20対1。

栗原氏の資料:例えば、AAAI(読み方:トリプルAI(エーアイ):Association for the Advancement of Artificial Intelligence)によると、論文数は2012年のヒントンのILSVRC後のDNNが盛んになった時期を見てみるとアメリカは倍増、中国は3倍、日本は横ばいに見える。また国別の共著関係を見ても、中国は米国と非常に近い位置。情報科学技術関係は特に難しい状況と言われており、情報科学技術関係全分野を網羅するものでは無いが計算機科学/数学の論文数で見ると、この10年で世界8位から20位に低下している。

齊藤氏:日本には優秀な人材がいる。人的資源の活用をしっかり考えれば抜本的な解決の可能性があるのではないか。
石田氏:ビジネスの現場でのAIへの抵抗感は非常に強い。音声認識の説明に行くと7割の処理率では「無理」と言われる。99.99%の水準までいかないと導入されない。

塚本先生:20年間のデフレで消極的になっているというのもあると思う。

石田氏:英国の産業革命の際は組合員が機械を破壊するのを厳罰化、15人が処刑された事実もある。

佐久間氏:数字だけを見るととても辛いが、今がどん底なら上がっていくしかない。代表を務めるAIRに参加している学生たちも危機感があるからだと思っている。学生自ら中国の80倍の論文数にチャレンジしたい。

3.日本の強みは何か

塚本先生:齊藤さんのスパコンは、なぜTOP1、2位を獲れるのか?

齊藤氏:我々が突拍子もない方法をとっていることは確か。アプローチがマジョリティとは全く違う。

塚本先生:他社が真似をしないのか?

齊藤氏:スパコンは舵を切るのに3年はかかる業界。中国は我々に近いアーキテクチャで、米国は驚いている。

塚本先生:いまのところ5年は貴社の優位性が高いとみていい?

齊藤氏:中国の追い上げが激しいので注意しないといけない。

松田先生:スパコン業界の脅威はもはや米国ではなく中国。学術では情報科学と工学分野が国内で完結しているのが問題。論文は英語で書くものだ。

塚本先生:研究を世界に発信するのは、シンギュラリティを起こすことと連動しているか?

松田先生:連動している。やはり世界に認められないと会議にも呼ばれない。アメリカで100人の招待制の会議があった。ここに呼ばれた日本人はIMS(注:理研統合生命医科学研究センター)の北野(宏明)氏1人だけ。こうした突発的な存在はいるが、「層」としてどうかという話。

栗原氏:例えば、日本は材料系が非常に強い。本日の齊藤先生の発表にも関連する慶應義塾大学の黒田先生の磁界結合技術はその典型例であるが、ものづくり等の言語の壁が無い分野は狙い目と言われる。また同様に我が国が強いと評価されている基礎医学系・再生医療等の分野と結び付くと、強みが発揮できるのではないか。ネットワーク・ソフトウェアでの応用から実社会での応用に対象が移行してきており、これは日本にとって非常なチャンス。

石田氏:導入部分では苦労すると思うが、人工知能ありきのアルゴリズムに入ったらとても成長が早いと思う。現状は「人ありき」で最大の工夫をしていて、新しいものの導入を嫌う。新しいものが自分たちにとって有利であるとなると、色々な業務改善が始まるしそのスピードは速い。一度突破さえすれば一気にいくと考えている。

佐久間氏:このように日本の強みを教えてくれる方たちと学生をつなぐ場を作るのがAIR。学生たちは自分たちは頭がいいと思っている節がある。文科省も若手に予算を付けてくれている。そのうち日本の新しい強みが出てくるのではないかという感じはしている。

4.今後のプランならびに展望

松田先生:ハードとソフト。ハードは齊藤さんのマシンで、日本が世界一。問題はソフトで、圧倒的にアメリカとイギリスが強い。日本には山川さんが始めた全脳アーキテクチャがあるが、一番必要なのは気概、やる気。人の能力に大差はない。若者のやる気と同時に大人がバックアップすることが大切。「2番じゃだめなんですか?」は気概の無さの象徴で、これが指導層にあってはならない。

齊藤氏:今後のプランは明確。AIとスパコンの戦いで負けるわけにはいかない。これを組み合わせた最強の科学技術基盤を立案して検証する。これが回り出すと論文が何百万本も出てくる。人間には書けない論文だらけになり、学会も人間があまり参加しなくなる。

塚本先生:それはどれくらいのスパンの話?

齊藤氏:個々のものは5年とかからず実現可能。それらが連携して回り出すのも5年以内。

石田氏:当社のコールセンターは会社の経営基盤を固めるための第一弾にすぎない。基盤が安定したら言語に限らず画像や創薬ベンチャーにも挑む。非定形なところまで順番に実現していきたい。

塚本先生:日本の産業全体としてはどうか?自動運転、ポケモンGOはどうか?

石田氏:自動運転は必ず来る世界。そこを頑張れる余地はある。かつて映画に携わっていた当時、米国は日本を見ていたが今は中国を見ている。中国一の大富豪になったワンダーグループに、日本のキーマンを紹介したが日本企業のほうが振り向かなかった。結果、日本を通り越して彼らはチンタオにハリウッド型の立派なスタジオを完成した。わずか5年で日本はビジネスチャンスを全て無くした。着実にやるべきところは抑えないといけない。

栗原氏:今年は理研AIPセンターが設置され、新たな科学技術振興機構のファンディングが始まったが、引き続きこれを拡充したい。例えば、コホート研究は我が国が良質なデータを保有している典型例であり、我が国はお年寄りも多数いらっしゃり定期健診等の受診率も高く、こうしたデータとの連携には大きな可能性があり、検討中。日本の文化的・社会的な背景、日本ならではの特色が塚本先生から言及のあったポケモンGOを生んだ面もあり、科学技術の研究開発だけで無く多様で魅力のある文化を育むことも重要。日本の課題の一つはマクロ的な生産年齢人口の減少だが、多様な背景を持つ方々が生き生きとした生活を実現し「一億総活躍」してもらうことが本日の会合のテーマであるシンギュラリティにも一歩つながる。官民協働海外留学支援制度トビタテ!留学JAPAN も今年も募集している。

塚本先生:佐久間君は今後、どうされる?

佐久間氏:これからヒントンのいるカナダのトロント大学に9カ月留学する。学生は気概が全てというところがあるが、日本人は潜在的に気概があると思う。外国人がポケモンGOをやっている間に、僕たちは気概でがんばりたい。

塚本先生:「日本からシンギュラリテイを起こす」、これは大切なスローガン。松田先生、締めのひとことを。

松田先生:気概を持て。

(報告:とりやま みゆき)

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*参考資料:

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第1回シンギュラリティシンポジウム ⑥「エクサスケーラーからプレ・シンギュラリティへ」齊藤元章

次世代スパコン開発は2年4カ月、汎用人工知能開発は1年目、次世代AIエンジン開発に着手したのは6カ月と短いが、本日は無礼講ということでお話したい。私は「やらないからできない」「無いものは自分達で作る」を旨としてやってきている。

人類が手にしたことがなかった「最強の科学技術基盤」を、我々は間もなく手に入れることになる。今日はこのような内容を、皆さんに頭に残して帰って頂けたらと思う。私の考えるところでは、この基盤は次世代AIエンジンと次世代スパコンの連携によって生まれてくる。

スパコンを開発する理由

なぜ我々のようなベンチャー企業がスパコンを開発するのか。この図はexponential(注:指数関数的な)なカーブ(収穫加速の法則)。25万年の人類の歴史のうち、直近2万年をプロットしたもの。農耕が始まり、文明が起こり、近代史が始まり、系統だった科学史が確認され、産業革命が起こり、情報通信革命、インターネット革命へと続く。シンギュラリティは、このあたりに到達する点である(カーブの頂点)。

これからどうやってシンギュラリティに向かっていくのか?私は2045年ではなく、もしかしたら2030年よりも前だと考えている。これから情報通信革命、インターネット革命に匹敵するような革命的事象が多発する。この状況の変化への準備と覚悟が必要であり、これを次世代スパコンで担いたい。これが、我々がスパコンを開発している理由である。

不老の解明とその実現も近い将来に起こる。昨年末、念願だった不老の女性の墓参りをしてきました。ブルック・メーガン・グリーンバーグさんは、1歳6カ月児の状態のまま20年の生涯を閉じた。彼女の身体は、新陳代謝は起こっているが、18年半も乳児の状態を維持した。遺伝子的な異常を含めて、一切の異常が現代医学では認められなかった。明らかなことは、彼女は我々成人と同じ60兆個もの細胞で構成されていたということ。生命科学的には1歳半の人間は成人と同じ60兆個の細胞を持つ。たんぱく質、代謝のレベルを解明することで不老の原因は究明できる。結果、人類史上で不老の唯一の事例であるブルックさんの状態は、科学的に再現できることになる。我々が開発中の次世代スパコンと、このあと説明する新しい科学技術基盤をもってすれば、5年から10年でこの謎を解明できて、同時に再現する手法も理解される。

「中国一強」時代の到来

「グランドチャレンジ(人類の重大課題)」を紹介したい。エネルギー問題、食糧問題、軍事と安全保障問題、医療と生命科学、公害・天災だ。これは、とある国が解決しないといけない問題だと明確に掲げている。その国は中国である。

先頃ドイツで開催されたISC2016では、中国純正のスパコン「神威太湖之光」の話題でもちきりだった。6期連続、3年間も世界1位に君臨したスパコン「天河二号」も実は中国に設置されたスパコンであった。最新の中国純正スパコンは、消費電力効率でも世界上位に食い込んでおり、GREEN500で3位に入っている、1位の日本の私どものShoubuと比べてもその性能は1割しか差が無い。3位以下13位までの全て、25位まででみても21台が中国内で稼働するスパコン。さらに中国は、運用台数でも世界一になった。先ごろ発表された最新世界ランキング「TOP500」では中国はコンピュータ史上初めて、スパコン国別台数シェアにおいてついに米国を抜いて1位となった。今後も3分の2、少なくとも過半数にのせてくるだろうと予測されており、「中国一強」時代が現実味を帯びてきている。

さらに中国は半導体に関しても、非常に積極的な投資を継続している。世界で19もの最新の半導体工場を建設(内10は中国)、国内自給率を高めるために10兆円を投じている事実がある。同時にスパコンを使いこなすソフトウェア技術者も養成中で、対人口比率で中国対日本では5対1、総数では50対1。科学技術分野での覇権を固めるための「ヒト・モノ・カネ・技術」の全てを中国が有しており、かつ集中的に投下していることを、我々も認識する必要がある。

人工知能の本質と第一の大分岐

我々が来年の稼働を予定しているスパコンは、100ペタフロップス(1台で「京」の10倍)を超える性能である。このスパコンは探索・解析・モデリング・シュミレーションができる。その中で、脳の解明にも着手している。電通大の山崎先生と一緒に、まずは小脳からということで猫の人工小脳をスパコン上で初めて実装して、これも初めてリアルタイム動作させた。今後は猫からヒト、小脳から大脳にもっていくことを当然、考えている。スパコンだけでなく、現在より1,000倍もの性能を持つAI専用エンジンの開発にも着手した。6月に設立した新会社のDeep Insightsで1年半以内の完成を目指している。PEZYグループもディープラーニングブームに乗っている、ということではない。私は「新」産業革命と呼んでいるのだが、我々は人工知能のポテンシャルを相当、過小評価している気がしている。

人工知能が処理可能であるのは人間が前処理した情報である、とされているがこれは大きな誤解あるいは人間のおごりではないか。今は処理能力が足りないだけで、本来は情報の前処理部分こそ、実は人工知能が得意とするところである。「旧」産業革命で人間や家畜の肉体労働と生産が置換された。今回は知的労働と生産が置換されるとされているが、これは本質ではない。更には、人間が行えない高度で複雑な知的労働・生産・作業が、人工知能によって行われる。しかも我々の想像を絶する規模と速度で、である。こちらのほうがはるかに重要で、かつ本質であろう。

以上のことから、我々は人工知能エンジンの開発も始めた。なぜ別会社を設立したのかとよく質問されるが、これはAIエンジンとスパコンの開発の方向性が真逆だからである。スパコンは倍精度浮動小数点演算が最低でも必要で、今後は多倍長演算が必要になっていくが、AIエンジンは単精度浮動小数点演算が基本。半精度、1/4精度でよい場合もあり、ビット演算でも十分な事例報告も出てきている。これを実現するために1チップで100万コア、100TB/s、DRAM一体、100Wの積層型半導体エンジンを1年半で製品化していきたい。

これを開発する理由は自明である。旧産業革命でジェームズ・ワットが蒸気機関を開発し、自国内で普及できた。その結果、イギリスが第一の大分岐の覇権国家となったからだ。人工知能による新産業革命の実現とリーディングが必要であるなら、人工知能エンジンが絶対に必要。強力なエンジンをいかに短期間に、どの国に普及させるかで、非常にクリティカルな状況が生じるという認識だ。そのため日本国内で作り、普及させていきたいと考えている。

「新」産業革命とコネクトームの進化段階

私はこれをシンギュラリティ実現のための方法論としても使っていきたい。1,000倍高速なAIエンジンでは仮説を立案することも可能で、新産業革命の実現が可能。1,000倍高速な次世代スパコンでこの仮説の検証をすることで争いをなくし、お金をなくし、不労/不老といった社会を生みだす前特異点の創出が可能。この仮説の立案と検証のループ、即ち最強の科学技術基盤を回すことで、我々の最大の目的である脳機能の解明とマスターアルゴリズムの解明ができる。その結果として汎用人工知能が生みだされる。これが特異点の創出につながると考えている。

カーツァイルの情報基軸の6つの進化段階は、今見返しても卓越した発想であると、その度に思い知らされる。進化は「情報の秩序を増すパターンを作り出すプロセスである」として、人類が技術を生み出して活用している現在は第4の進化段階であり、第5の進化段階は「技術と人類の知性が融合する」、最終の第6段階は「知性が宇宙に満ち渡る」としている。私はこの「知性が宇宙に満ち渡る」が意味するところが長い間、解らなかった。今は、コネクトームを基軸とした6つの進化段階というものを独自に考えている。進化とは「コネクトームの階層と複雑さを増幅するプロセスである」という発想である。第1は線虫レベルの「原始コネクトーム」、第2は「人間の脳」のレベルのコネクトーム、第3は「人類全体の脳」で人間の脳を1つの神経細胞と見立てた、73億Hではない膨大な規模の地球全体レベルのコネクトーム。第4は「銀河全体の知性」で地球を1つの神経細胞と見立てた、AGIの次のASIでも太刀打ちできない銀河系レベルのコネクトーム、第5は1,500億個もの銀河からなる宇宙スケールのコネクトームによる「宇宙全体の知性」で、これがカーツァイルの第6段階の状態に相当すると考えるに至った。最終の第6段階は「超宇宙知性」。我々の存在する宇宙空間を超えて並行宇宙や、異次元宇宙と接続されたコネクトームの更なる最終形も予測することができる。

こうしてコネクトームのプロセスを並べてみると、人類にはまだまだ進化の余地が大きく残されており、人類は当然にさらに進化しないといけないと思う。シンギュラリティがきた後をどうするのか。人間は知性の高座から降りないといけないのか。そんなことはなくて、我々には見ていかなければならない将来、進化の可能性が沢山ある。

特異点創出までの工程

ここで、具体的な工程を示したい。新医療創出のために、新会社をもう1つ設立した。次世代のAIエンジンと次世代のスパコンで仮説の立案と検証を行い、仮説を理論にそして理論から概念を生みだせることをこの新会社で実証したい。医療分野でよいパートナーが見つかったので、ガン細胞の分析から入る。実際にこの仮説検証モデルを用いて、キュレーションシステムを回していく。日本の医療分野において遅れているのがこのキュレーション分野だ。アメリカの会社に委託しているのが現状のため、日本独自のキュレーションシステムを、実際の「最強の科学技術基盤」の初の社会実装例、応用事例として回していきたい。

次世代スパコンは、既存のグループ3社共同で開発中である。予算が確保できれば2017年6月にも100ぺタフロップスの性能のものを動かしたい。これができると人工知能開発にもフィードバックできる。仮説の立案まで行える新しい人工知能エンジンは、2018年中には作りたい。これができるといろんな展開が可能となる。まず、ノイマン型にとどまるがニューロモフィックなハードウェア、即ち汎用人工知能のプロトタイプを作りたい。非ノイマン型の前段階として、コネクトームの機能を実現したい。これは要素技術の検証プラットホームとしてのプロトタイプを作ることを意味する。続いて早ければ2018年中、遅くとも2019年には1エクサフロップス級のスパコンを開発できると思っている。これができるとマスターアルゴリズムの研究とモデル構築に、かなり寄与できるのではないかと思っている。これらが進んでいく中で、汎用人工知能を2025年から2030年頃までに、なにがなんでも作っていきたいと思っていて、これが特異点創出につながると確信している。これらは一見すると全く異なる要素技術でありながらも、その8割は共通技術であり、日本国内で開発と製造が可能だ。非常に幸運なことにこれらの技術は全て、日本国内にある。海外で探しても得られない要素技術がこれらを構成している点で、日本が素晴らしい国だと日々痛感している。同時に、そうであれば日本がこれを突き進めていかなければいけない。特異点を創出するのも、汎用人工知能を作り出すのも、我々日本人でなければいけないのではないかと考えている。

来年中の100ぺタフロップス超のスパコンの開発は、技術的には可能なものの予算措置はこれからの話。先ごろ麻生副総理兼財務大臣が理研でShoubuとSatsukiを御視察下さり、御見識を深めていただいた。これを機に、よい方向に向かえばいいなと思っている。

株式会社PEZY Computing 創業者・代表取締役社長 齊藤 元章

(報告:とりやま みゆき)

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*講演資料:

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第1回シンギュラリティシンポジウム ④「日本からシンギュラリティを起こそう」松田卓也

人類は今シンギュラリティに向かっています。シンギュラリティの定義は人それぞれで、レイ・カーツワイルは1000ドル(10万円)のPCの能力が全人類の知能に匹敵する時(2045年)と言い、また、グッドは知能爆発即ち、人工知能が自分のプログラムを書き換える時と言っています。また私は、超知能が出来る時だと思っています。この超知能は機械知能かもしれないし、機械知能で知能増強された人間かもしれません。

人類史は3つ目の転換点を迎えようとしています。第一は約1万年前の農業革命、第二は約250年前の産業革命、そして第三はこれから10年から30年後に起こると予測されているシンギュラリティ革命です。産業革命に成功した西欧諸国やアメリカ、日本などは今、先進国と呼ばれていますが、それに乗り遅れてしまった中国やインド、トルコなどの国は、植民地化され、先進国に収奪され発展途上国になってしまいました。

駒澤大学の井上先生によれば、農業が発明されて以来1800年までは一人当たり所得は変わらなかったのに対し、産業革命の時に起きた大分岐後の経済は、資本と労働により生産活動が増加し、GDPが指数関数的に成長することになりました。シンギュラリティ革命後の経済は、労働が無くなり、資本のみで生産活動が行われるようになり経済成長率が指数関数的に成長し始めるようになります。アメリカのゾルダン・イシュトバン氏(トランスヒューマニスト党)はアメリカでシンギュラリティを成功させたいと考えています。それに乗り遅れた国は21世紀の発展途上国となってしまいます。日本を含む国が21世紀の先進国に収奪され、機械の奴隷になると考えられています。

現在の人工知能は専用ないしは特化型人工知能と呼ばれ、Alpha GoやSiri, Google検索、Amazonの推薦、自動運転などの技術が今後15年で世界を変えて行くと考えられています。一方汎用人工知能(AGI)は人間並みに常識を備え一応何でもこなす人工知能のことです。人工知能は子供の知能と大人の知能に分けられ、論理的思考や合理的思考の大人の知能は比較的簡単にできますが、歩く、見る、話す、意味を理解するなどの子供の知能の方が機械的に達成は難しく、特に自然言語処理は最重要事項です。この汎用人工知能こそが世界を変えます。

意識がある人工知能を強い人工知能と呼び、意識がない人工知能を弱い人工知能と呼びますが、ハリウッド映画や小説で描かれるものやホーキング博士の人工知能脅威論などはすべて人間中心的発想です。意識は付加的なものであり、人間には真の意味で自由意志などはないのです。人間のような知能を作ろうとする必要はありません。それは鳥のような飛行機を作るようなものでナンセンスです。また感情も不要だと思います。人間の知能のように限定することなく、新しいものを作ればよいと思います。私の考える汎用人工知能はスポック型で論理的・合理的・理性的思考に特化し、人間と機械知能のハイブリッド型サイボーグで、感情・意識などの人間的要素は人間が担い、(塚本先生の姿のような)知能増強人間に私もなりたいと思っています。

超知能は人間一人分の知能を1H=ヒューマンと呼び、100億Hの汎用人工知能です。あらゆる科学的知識を瞬時に獲得し、頭の回転が人間の100億倍速い、300年分を1秒で計算します。人間の理解を超える深い思索、世界で一人だけ理解できる京都大学望月新一教授の「宇宙際タイヒミュラー理論」のような難しい理論を瞬時で解明できるのが超知能です。これにより新しい科学技術の急激な創造と展開が期待できます。

超知能を初めに作った国は世界の覇権を握ると先程のゾルダン・イシュトバンが言っています。しかし軍事利用される恐れがありますので、平和国家の日本からシンギュラリティを起こし、上手く利用して不老・不死・不労の理想的なユートピア出現を目指そうというのです。超知能をめぐるThe Great Gameは米国企業(Google, Facebook, IBM, Microsoft, Amazon)の独壇場です。DeepMind, Numenta, Vicariousなどのベンチャーも活躍しています。百度などの中国企業もあります。日本はどうでしょう?SonyのAIBO撤退に象徴されるような大企業の先見性のなさ。齊藤さんが巻き返しを図ってくれることを期待しています。

汎用人工知能のためのThe Master Algorithmは大脳新皮質を模擬するのが手っ取り早いと考えられます。最近山川さんがマスターアルゴリズムの姿が見えてきたと緊急ハッカソンを開催されるとおっしゃっていました。Deep Learningにはない、人間の脳の領野におけるFeed Back信号の重要性を唱えるK.FristonのPredictive Codingに注目しています。

大脳の効率性は、非合理性と裏腹です。人間が生物として生きて行くための必要な事前知識は大脳の判断を速くするのに役立っており、それがマイナスに作用したものが錯視、思い込み、レッテル貼り、偏見です。複雑な現代社会でネガティブに働くものを排除し、それらを突破した理性の塊のようなものを期待しています。

日本が超知能を開発する上で、ハードウエアは齊藤さんのマシンに期待しています。ノイマン型をDeep Insights社が開発中、脳型はNeuro Synaptic Processing Unitです。いずれも齊藤さんの設立した関連会社が手掛けています。また、マスターアルゴリズム即ちソフトウエア開発はWBAI、若手の会、そして私の主宰する「不敵塾」が担いたいと思っています。

これから我々に求められるものは、才能と気概に溢れた若い力!それをサポートする大人、少なくとも邪魔しない大人です。本日来場された若い人たちに大いに期待しています。

AI2オープンイノベーション研究所所長/神戸大学名誉教授 松田卓也 

(報告:大久保香織)

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*講演資料:

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第1回シンギュラリティシンポジウム ①「主宰者挨拶」

この度第一回シンギュラリティシンポジウムを開催することになりました。

シンギュラリティサロンは、日本からシンギュラリティを起こそうということで大阪にて設立されました。世話人は私の他、神戸大学教授・塚本先生、Xooms保田氏、ブロードバンドタワー根本氏、Eyes, Japan山寺氏です。2014年WIRED若林さんとお会いしたのがきっかけで、2015年9月経産省も共催し、WIREDシンポジウムを開催することになりました。大変な反響がありました。2015年1月に情報処理学会会誌(Vol.56 No.1通巻598号)で塚本先生がシンギュラリティ特集を組まれました。シンギュラリティサロンは2015年2月から毎月1回開催しており、24名➡36名➡100名そして今回の380名と拡大しています。8月からは東京でも開催しています。サロンでは私が日本のキーパーソンと思う方々を呼んで講演して頂いています。これまでの登壇者は私と塚本先生の後、一杉さん、白山さん、齊藤さん、山川さん、石黒さん、市瀬さん、光吉さん、高橋さん、栗原さん、井上さん、美馬さん、姫野さん、大林さんでした。ブロードバンドタワーの藤原洋会長や、ナレッジキャピタルに共催頂いています。また今回は、ナレッジキャピタルの昨年度イノベーションアワードでコト部門優秀賞を頂いた特典でこのシアターを借りることができました。

2014年松山での人工知能学会に呼ばれました。トランセンデンスという映画のプロモーション企画でした。そこで全脳アーキテクチャの山川さん、一杉さん、松尾さんにお目にかかり、シンギュラリティサロンの活動について開眼しました。

私にとって最大の発見は、このサロンで、「エクサスケールの衝撃」を出版された齊藤さんにお会いしたことです。齊藤さんは2015年7月27日「Changing the Game次世代スパコン開発からAGI開発へ」というタイトルで衝撃的な発表をされました。

その後のインタビューはWIREDのウェブサイトに掲載されています。また、保田さんが編集して下さり「人類を超えるAIは日本から生まれる」という書籍も出版されました。

本日はAIスクエアの石田さん、神戸大学の塚本先生、文科省の栗原さん、AIRの佐久間さん、そして、2度目の齊藤さんをお迎えしてそれぞれお話が伺えることを大変楽しみにしております。

AI2オープンイノベーション研究所所長/神戸大学名誉教授 松田卓也 

(報告:大久保香織)

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*講演資料:

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第1回シンギュラリティシンポジウム ③「ウェアラブルの未来」塚本昌彦

ここ数年ウェアラブルは大変盛り上がっています。私は15年前からHMDを身に付けていてやっとこの時代が来たかと思いましたが、今年になって残念ながらIoT、人工知能に追い抜かれました。ウェアラブルは難しいと言われ、難航していますね。たくさんのハードルがあり、作り手使い手の双方の経験が足りていません。

そんな中、ポケモンGOが全米で大ヒットしました。こんなブームになるとは予測していませんでした。ポケモンGOは、スマホを持って実世界を歩き回りポケモンを捕まえ、育て、ジムで戦わせるゲームです。5日で750万ダウンロード、課金14億円売上、任天堂の株価が9000億円アップしました。日本でも間もなくリリースされます。腕時計型「ポケモンGO Plus」(ウェアラブル)も出ます。アイテム課金、集客、広告、イベント動員用ポケモンミューツーなどポケモンGOビジネスはさらに広がるでしょう。

このゲームでGoogleの世界支配が一歩進みました。Googleマップ、ストリートビュー、Ingressからの地理情報活用の流れで他社の全く持たないリソースを有効活用しています。このポケモンGOの成功に触発されて他のウェアラブルビジネスも一気に進むのではないかともいわれています。

さて、私はこの講演でいくつかの予言をします。

予言1 噂ですが、Apple Watch2がもうすぐ出るでしょう。

予言2 Google Glass2も年内に出るでしょう。これは業務用で、民生用も来年には出るのではないかと言われています。

予言3 国内でも業務用HMDがあちこちで使われるようになるでしょう。

予言4 ウェアラブルでの人工知能利用が進むでしょう。顔認識、物体認識、音声認識、翻訳、行動認識、ナビゲーション、レコメンデーション、危険察知、不審者検出、作業支援、移動支援、意思決定支援など。賢くなった人工知能はウェアラブルで非常に有用であり、現場で働くすべての人々の業務内容の根本が変わるでしょう。

ウェアラブルの更に先は何が待っているのでしょうか?機器を体に埋め込むインプラントです。機械やデバイスを神経に直接・間接接続のサイボーグ、さらに脳に電極を差し込む・・・という話になります。

シンギュラリティの話に戻しますが、シンギュラリティは人工知能だけではないのです。定義の話になりますが、私は「人工知能が人類の知能を(はるかに)追い越す日」という定義が間違っていると思います。サンドバーグの論文によりますと、カーツワイル「急速なテクノロジの変化」フレイク「自己増殖する知能」グッド「知能爆発」シンギュラリティ大学「超知能の出現」ビンゲ「予測限界」等々・・・日本での定義を広めたのは、カーツワイルの「ポストヒューマン誕生:コンピュータが人間の知性を超えるとき」ですが、これは誤訳です。原題は「The Singularity is Near: When Human Transcends Biology」です。つまり人間が生物を超えるということです。また、松田先生の「2045年問題」では「コンピュータが人類を超える日」という副題がついています。カーツワイルはコンピュータが人間を超えるのは2029年、その後のシンギュラリティが2045年と言っています。非常に誤解を生みやすい表現ですので、明らかに異なります。

私の定義(塚本案)は、科学技術の発展曲線が特異点=Singularityとなる日です。これを実現するのが超知能で、超知能は人工知能かもしれないし、人間かもしれません。超知能は短期間に科学技術のあらゆる問題を解決します。宇宙、生命、意識他、宇宙旅行や地球外生命、核廃棄や生命の謎について、宇宙外の何かについてもわかるかもしれません。人工知能は危険だと言われます。ホーキング博士は「人工知能の進化は人類の終焉を意味する」といい、人類はもしかしたら人工知能に支配されてしまうかもしれません。防御する方法はもしかしたらないかもしれません。Googleの人工知能を「切るスイッチ」も実現可能か疑問です。

私は、唯一の対抗策は人間強化だと思っています。人類が超知能をもつこと、人工知能を意識の支配下で自由に使いこなすための手段を持つこと、人工知能の発展に負けないスピードで人類が賢くなることが大切です。「ウェアラブルからシンギュラリティへ」という考えにもとづき、まずはウェアラブルを一気に浸透させて人工知能を活用させましょう。そしてBMI BCIおよびコンピュータの脳・神経直接接続(電脳化)、インプラントの展開、特にマイクロロボット、更にナノボットで脳増強します。そして人間が超知能を持つようになり、攻殻機動隊の世界が実現します。
実際すでに、攻殻機動隊のREALIZEプロジェクトが始まっています。また神戸市には「公安9課」が設立されました。私も入りたいのですが残念ながらまだ入っていません。

以上が私のプランです。ここにいらっしゃる方々は私の意見にご賛同頂けたものと考えて宜しいでしょうか(笑)?まずはウェアラブルを着けましょう、そして電脳化を進めましょう。BMI BCIは徐々に進歩しています。脳刺激は医療分野で実用化しています。まずは脳以外の神経刺激から始めましょう。第三の手も必要ですね。

ウェアラブルは日本が主導すべきだと思います。根本的に平和主義・高道徳なのは日本だけです。ポケモンGOの成功は重要なステップになると思います。様々な規制は積極的に取り払うべきで、ドローン、ウェアラブルカメラ、マインドアップローディングや遺伝子改変、クローンの問題などは禁止するのではなく前向きに解決すべきだと考えています。

さて、予言の続きです。

予言5 私は15年以内にサイボーグになる。10年後には脳に電極を差してコンピュータに直接接続したい。5年後には第三の手をつけて立食パーティーの場で名刺交換したいと思っています。

予言6(つけたし) 今日の参加者は全員1年以内にウェアラブル生活を始めるでしょう。是非日本からウェアラブルをいちはやく推進してシンギュラリティを起こしましょう。不安な方は私の主宰するウェアラブルコミュニティ(NPOウェアラブルコンピュータ研究開発機構、日本ウェアラブルデバイスユーザー会)にご参加ください。

神戸大学教授 塚本昌彦

(報告:大久保香織)

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*講演資料:

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第1回シンギュラリティシンポジウム ②「AIコンタクトセンターに見る未来」石田正樹

まずはなぜAIでビジネスをやるのかということについてお話したいと思います。ここ20年間のGDPの伸び率を他国と比較してみると、日本だけがマイナス成長です。これは日本が技術革新ができていない、生産性が向上していないという事を示しています。他のアジア諸国では15歳から64歳までの生産年齢人口が増加しているのに比べ、日本は2006年をピークに7年連続減少、27万人減少しています。つまり生産する人がいないのです。技術革新をするしか日本の未来がないのです。

我々は今年の10月にサービス分野でAIの技術を使ってロボットと人間が共存するAIコンタクトセンターを作ろうと考えています。テレマ事業は日本で1,5兆円の市場があるのですが、人がいない、仕事を覚えられない、即ち自動化するしか道がないのです。
ガートナーのハイプサイクルにおいて音声認識はアメリカでは今や普及期の技術になっていますが、日本のコールセンターではまだその技術を取り入れていません。20年遅れです。

英オックスフォード大学オズボーン准教授の「10年で無くなる職業」の筆頭に電話オペレーターの仕事が上げられています。小説「フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち」(マイケル・ルイス著)という本があります。ヴァーチュファイナンシャルという会社はこうした株の売買を自動でやっていますが、現在世界225の取引所で上場されています。昔、株の取引は「場立ち」といって仲買人が人手で取引をしていましたが、今自動化が当たり前になっています。私たちはこれをコンタクトセンターでやろうとしています。

AIコンタクトセンターでは、お客様からの電話を音声認識で受け、何を言っているかを理解して必要な情報をやり取りします。日本語テキストを解析し、Deep Learning的な処理等複雑なアルゴリズムを既に私たちのサーバーでは装備しており、AIに学習させています。情報はテキストで一元管理してお客様のニーズに応えます。
これまでのコンタクトセンターでは、24時間対応でなく、本人確認など煩わしい手続きが必要でしたが、AIオペレーターは24時間対応可能で、電話のように話し中ということもありません。名前・生年月日・電話番号プラス声紋の4つの認証で送金などは問題なくできます。AIを使って今後オペレーターの人件費をどんどん省いていこうと考えています。

自動運転の頭脳は、センサーから入るミリ波レーダーやレーダースキャナーやカメラから認知したデータを判断、アクセルやブレーキ、ハンドルなどの操作を指示します。AIコンタクトセンターの頭脳では、音声認識や感情分析で認知したデータをテキスト解析し、判断、音声合成やCRM連携操作を指示します。
とは言え、自動運転同様いきなりやるのは怖いというお客様に対しては、お試しの席をいくつかご用意しています。いきなりすべてを自動でできるわけではありません。

自動車のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)自動走行システムの研究開発計画によれば、レベル1は安全運転支援システム、レベル2では加速・操舵・制動複数を同時に自動車が行う状態、レベル3では加速・操舵・制動すべてを自動車が実施、緊急時のみドライバーが対応する状態(レベル2,3は高度運転支援システム)、レベル4では加速・操舵・制動すべてをドライバー以外実施、ドライバーが全く関与しない状態(完全自動走行システム)となっています。私たちはレベル3までは人間がしっかり握っていないといけないと認識しています。先日のテスラの事故はレベル2で手放してしまったことでおこってしまいました。手放してはいけない段階ではしっかりこちらが管理してお客様に提案しています。

豊田佐吉はもともと人手でやっていた紡績を、蒸気などを利用し自動織機を発明しましたが、いまだに自動織機の世界では世界一の技術を誇っています。
是非私たちも歴史に学び、日本を新しい技術の力で元気にしていきたいと考えています。

※ 講演当時は「AIコンタクトセンター」と呼んでいましたが、「RPAセンター」を正式名称としました。Robotic Process Automationが由来です。

株式会社AIスクエア 石田正樹

(報告:大久保香織)

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*講演資料:

「シンギュラリティサロン」について

シンギュラリティ(技術的特異点)とは、人工知能の能力が人類のそれをはるかに超える出来事または時点と定義され、それ以降の人類の歴史は予測できないとされています。またその時点で人工知能の能力が爆発的に進化する知能爆発が起きるとも言われています。

本サロンでは、シンギュラリティに関する公開講演会や勉強会を定期的に行い、シンギュラリティを様々な側面から議論することによって、主として専門家と一般市民の意識改革を行うことを目指しています。

(詳しくは設立趣旨へ)