シンギュラリティサロン#9 市瀬龍太郎 「人工知能の新しい潮流 ~ 汎用人工知能の実現に向けて」

さる2015年10月24日、グランフロント大阪・ナレッジサロンにて、シンギュラリティ・サロン「第9回公開講演会」を開催しました。

今回は市瀬先生の汎用人工知能AGI(Artifucial General Intelligence)のお話を、またブロードタワーさんのご提供により、オレンジジュースやコーヒー、クッキーを頂きながらの講演会となりました。参加者のAGIへの関心も高く、いつも以上の質問が講演後の市瀬先生に寄せられました。

市瀬先生のお話されたテーマはAIではなく”AGI”。その違いは特化されたAIなのか、それともオールマイティのAIなのかです。要するにチェスの対戦ではチェスに勝つための、クイズにはワトソンのような、いわばある目的に特化された人工知能が開発され、ご存知の通りこれまでに大きな成果が上げられてきました。しかし元々人工知能研究者が想定していた人工知能(AI)とは、チェスだろうとクイズだろうとどのような目的にも対応できるAI、つまりgeneralなAIでした。ちなみにこれに対してこれまでの特化型AIはnarrow AIとも呼ばれます。そしてそのようなオールマイティーなAIをベン・ゲーツェル氏が改めてAGIと名付けたわけです(そしてこのAGIの達成こそが、ある意味で技術的特異点であるとも言えます)。このシンギュラリティを語る会の世話人でもある松田卓也先生も、かつての日本語ワープロがPC上で動く一太郎やワードに駆逐された例を挙げ、特化よりも汎用こそが重要と仰られています。今回はそのAGIの概要やこれまでの経緯、そして最近の動向を市瀬先生よりお話いただきました。

個人的に特に興味を持ったのは知識グラフのお話で、AGIを達成するにはそれだけの膨大な知識が必要となるのですが、当然ながらただデータを拾い集めるだけではなくそれらの関連性が重要になってきます。知識グラフはそのための技術で、既にそれは私達が、例えばSiriに何かを尋ねると欲しい情報を提供してくれたり、サファリなどである人物を調べると関連人物も紹介されたりしますが、あれも実はそうした人工知能の技術が使われており、実生活で既にその恩恵に与っているわけです。

他にも現在AGIに向けての様々な手法やアプローチ、オープンソース等が研究開発されているそうです。AGIに手が届きそうなところにまで来ているものの、まだ道半ばにあるようですが、それは十分に期待できそうです。

(報告:水谷雄一)

*今回はプレゼンテーション資料の公開はありません。