「シンギュラリティを語る会」設立趣旨

シンギュラリティ(技術的特異点)とは、人工知能の能力が人類のそれをはるかに超える出来事または時点と定義され、それ以降の人類の歴史は予測できないとされている。またその時点で人工知能の能力が爆発的に進化する知能爆発が起きるとも言われている。

シンギュラリティはレイ・カーツワイルによれば2045年頃に起きるという。他の専門家の意見分布を見ても2070-80年代までには起きるとする人が90%を占めている。

シンギュラリティで生まれるのは人間をはるかに超越する超知能である。超知能が生まれると、科学技術の研究が恐るべきスピードで進むことになり、人類の生活は一変する。超知能を上手く使えば人類の多くの課題を解決することができると期待できる。カーツワイルをはじめとする専門家には、このような楽観論が多い。一方、超知能は人類を滅ぼすとか、隷属させるといった悲観論が宇宙物理学者ホーキングやテスラモーターのマスクたちにより懸念されている。

シンギュラリティは起きるとしても、早くても30年先のことであるが、それ以前に人間と同様に考える機械が2020年代には生まれるとカーツワイルたちは考える。その時点を前シンギュラリティと呼ぶことができるだろう。すると現時点から15年後に前シンギュラリティが起きて、そのさらに15年後にはシンギュラリティに達するというタイムテーブルを描くことができる。

シンギュラリティが起きる以前でも、人工知能とそれを搭載したロボット技術の発展は、人間の多くから知的労働、肉体労働を代替することにより技術的失業が起きると懸念されている。しかし同時に労働生産性が画期的に上がることになり、それをうまく利用すれば人類は、極端に言えば、働かなくても遊んで暮らせることになる。そうなるかどうかは社会システムの問題であり、技術の問題ではない。

シンギュラリティを目指して行われる人工知能、ロボット、ICT研究は国の将来に重大な影響を及ぼす。先にそのように技術を獲得した企業や国は、技術的、経済的、軍事的に他に対して圧倒的な優位性を獲得する。そのためシンギュラリティを目指して米国のIT大企業は膨大な研究投資を行っている。また米国とEUの政府レベルでも同様な大規模な研究投資が行われている。翻って我が国を見ると、企業レベル、政府レベルではそのような大規模研究投資は全く行われていない。このままでは日本は完全に取り残されてしまう。その理由の一つは日本の指導層、つまり政治家、官僚、経営者、マスメディアにシンギュラリティに関する知識が欠除しているからであろう。日本の未来は日本からシンギュラリティを起こせるか、あるいは列強に伍していけるかにかかっていると思う。

本会ではシンギュラリティに関する公開講演会や勉強会を定期的に行い、シンギュラリティを様々な側面から議論することにより、主として専門家と一般市民の意識改革を行うことを目指している。さらには指導層にまで影響力が行使できれば、願っても無いことである。

 

2015年1月10日
松田卓也