シンギュラリティサロン#46 渡辺 正峰「意識を科学のまな板にのせる - 20年後の意識のアップロードに向けて -」

詳細
シンギュラリティ(技術的特異点)とは、将来、 人工知能の能力が人類のそれをはるかに超え、 その結果として科学技術が猛烈なスピードで発展しはじめるときのこと。人間を超越する「超知能」が生まれたとき、 人類の歴史はどこへ向かっていくのでしょうか。

今回のシンギュラリティサロンの講師は、「シンギュラリティサロン#30(2018年7月21日、他)」「シンギュラリティサロン #33「意識をめぐる大冒険」(2019年3月10日)」に登壇いただいた、東京大学の渡辺 正峰さん。渡辺さんは、アカデミアで脳科学を研究する一方、「意識のアップロード」を目指すスタートアップ、MinD in a Device社を設立し、10年以上に渡る研究成果 をもとにした意識のアップロード構想の実現へむけて、精力的な活動を展開されています。

そんな「意識のアップロード」の最先端を切り拓いている渡辺さんに、意識を科学として捉えるためのアプローチと、マインドアップロード実現への道筋をお話いただきます。

■開催日時

【日時】2021年2月28日(日)13:30 – 16:00

【方法】ZOOMでのオンライン配信
※視聴URLは、申し込みいただいた方に返信メールにてご連絡します。
 ZOOMリンクは参加者本人のみご使用ください。リンクの転送はお控えくださいますようお願いします。

【参加費】 無料

【定員】300名

■タイムスケジュールと概要

13:30 – 13:40 冒頭挨拶と講師紹介

13:40 – 14:40 講演 「意識を科学のまな板にのせる - 20年後の意識のアップロードに向けて -」

【講師】渡辺 正峰(わたなべ まさたか)氏 
 東京大学大学院工学系研究科 准教授
 独 Max Planck Institute for Biological Cybernetics グループリーダー
 株)MinD in a Device 共同創業者 技術顧問

プロフィール
’93年東京大学工学部卒業、’98年東京大学大学院工学系研究 科博士課程修了。’99年博士研究員、’00年助手、’ 02年助教授、その間の米カリフォルニア工科大学留学などを経て 、現在は東京大学大学院准教授および独マックスプランク研究所客 員研究員。専門は脳科学で、特に意識に関し理論研究から実験的研 究まで幅広く従事。2017年に著書「脳の意識
機械の意識」を中央公論新社より刊行。10年以上に渡る研究成果 をもとに意識のアップロード構想を実現するべく、MinD in a
Device社技術顧問に就任。

【講演概要】
 研究対象としての意識は、長らく哲学と科学の間を彷徨ってきた。 意識の仮説を検証する術を我々が持たないためだ。素直に考えれば 、意識を有する脳を用いて仮説群を検証すべきところだが[1, 2]、生体である宿命から、仮説検証に必要な「意識の本質」の抽 出が許されない。無理に抽出しようとすれば、今度は脳が死んでし まう。

 この壁を乗り越えるべく、機械へと意識を宿す試み、すなわち、ア ナリシス・バイ・シンセシスによって意識の本質へと迫る手法を取 り上げる。ここで必須となるのは、 機械の意識を検証する手法である。空気がなければ飛行機械の開発 がままならないように、人工意識の検証法なくして、アナリシス・ バイ・シンセシスによる意識の探求は成立しない。

 そこで、機械の意識を検証する手法として「人工意識の脳接続主観 テスト」[3,4]を提案する。当該機械を自らの脳に接続するこ とにより、自らの意識をもって機械の意識を”味わう”。ただし、 人工網膜や人工鼓膜によっても感覚意識体験が生じてしまうように 、単に脳に機械を接続すればよいというものではない。テストの可 否を握るのは、機械に意識が宿った場合にのみ、脳との間で感覚意 識体験が共有される機械と脳の接続のあり方だ。ヒントとなるのは 、ロジャー・スペリーによって二つの意識が共存することが示され た分離脳である。

 また「人工意識の脳接続主観テスト」を思考実験として用いること により、情報に意識が宿るとするこれまでの仮説群の問題点を指摘 し、その代案として、神経アルゴリズム(生成モデル)が意識を生 むとする自身の仮説[5]を紹介する。

 最後に意識の機械への移植について議論する。上記、主観テストの 方法を用いて機械と脳を接続し、いくつかの仮定が正しかったなら 、20年後の意識のアップロードも視野に入ってくる。

[1] Watanabe, M., K. Cheng, Y. Murayama, K. Ueno, T. Asamizuya, K.
Tanaka and N. Logothetis (2011). “Attention but not awareness
modulates the BOLD signal in the human V1 during binocular
suppression.” Science 334(6057): 829-831.
[2] Watanabe, M.; Nagaoka, S.; Kirchberger, L.; Poyraz, E.; Lowe, S.;
Uysal, B.; Vaiceliunaite, A.; Totah, N.; Logothetis, N.; Busse, L. et
al.: Mouse primary visual cortex in not part of the reverberant neural
circuitry critical for visual perception. (in revision)
[3] Watanabe, M. (2014). “A Turing test for visual qualia: an
experimental method to test various hypotheses on consciousness.” Talk
presented at Towards a Science of Consciousness 21-26 April 2014,
Tucson: online abstract 124
[4] 渡辺正峰(2017)「脳の意識 機械の意識」中央公論新社
[5] 渡辺正峰(2010)「意識」『イラストレクチャー 認知神経科学―心理学と脳科学が解くこころの仕組み』村上郁也編 、オーム社

14:40 – 16:00 座談会 「意識は科学のまな板に乗るか? 20年後の意識のアップロードは可能か?(仮題)」

【登壇者】渡辺 正峰 氏 + 松田 卓也氏(神戸大学 名誉教授)・塚本 昌彦氏(神戸大学大学院工学研究科 教授)・ 小林 秀章 氏(セーラー服おじさん)

【司会】保田充彦(株式会社XOOMS代表、ナレッジキャピタル・リサーチャー)

■シンギュラリティサロンとは

シンギュラリティサロンは、シンギュラリティに対する専門家、 一般市民の意識改革を促すべく、ナレッジサロンを 会場に2015年より講演や勉強会を重ねてきました。新型コロナウイルス「 自粛」後、2020年秋から、ナレッジキャピタル・SpringX超学校ONLINEでリアルとバーチャルを横断する新たなシンギュラリティサロンの活動を開始しました。こちらの「シンギュラリティサロン・オンライン(ZOOM)」は、従来のシンギュラリティサロンのテイストを踏襲し、「SpringX超学校ONLINE」よりも、高度で「コア」なテーマの講演と座談会をお届けします。

■お問い合わせ:シンギュラリティサロン事務局  admin@singularity.jp

主催

シンギュラリティサロン

共催

株式会社ブロードバンドタワー、一般社団法人ナレッジキャピタル