シンギュラリティサロン#53「意識の考え方」を考える──北大CHAINの挑戦

シンギュラリティ(技術的特異点)とは、人類がついてゆけないほどのスピードで科学技術が猛烈な発展をはじめるときのことを言います。その結果として人間を超越する「超知能」が生まれたとき、人類の歴史はどこへ向かっていくのでしょうか。

「意識」というテーマは長く哲学のなかで論じられてきましたが、1990年代頃からは科学的なアプローチが盛んになり、21世紀に至って百家争鳴の状況が続いています。そのなかで、「意識」の問題そのものの難しさが浮き彫りになり、アプローチの方法自体をあらためて問い直さなければならないという現状があります。

本講義では、「意識」という問題をまず解きほぐした上で、現状見られる様々なアプローチから、どのような展望が描けるのかについて議論します。講演者2名が所属する北海道大学人間知・脳・AI研究教育センター(CHAIN)では、多様な学問と多様なアプローチが組み合わさり、互いに切磋琢磨しながら、刺激的な議論が行われており、その成果の一部も紹介します。

■開催日時と申込み

【日時】2021年10月30日(土)

【方法】YouTube Liveでのオンライン配信

【参加費】 無料

【定員】なし

■タイムスケジュールと概要

13:30 – 13:40 冒頭挨拶と講師紹介

13:40 – 14:40 講演

【講演概要】
第1部:内部と外部の捻れたループ──意識のイメージを変える 田口 茂氏

最初に「意識」という当たり前すぎて通常は気づかれないものが、どのように明示的に概念化されるのかを考えます。次に、意識を「閉じた内面」と考える強固なイメージを相対化します。意識はカプセルか箱のようなものではなく、「自分を包むもの=外を自分の内に含む」という構造をもちます。F. ヴァレラらはこれを「主体と環境の根源的循環性」と呼びました。「意識」について気づき、それについて語れるようになるというのは、こうした循環構造や捻れたループ構造そのものを見ることができるようになる、ということなのではないでしょうか? ここではこのようなアイデアを追究してみます。

第2部:「意識を教える」からエナクティブ・アプローチへ 吉田 正俊氏

今年度、北海道大学の大学院全学共通の講義として「意識の科学入門」を開講しました。そこでは意識の研究を「知覚としての意識」「自己としての意識」「生命・情動としての意識」というアプローチに分けて整理したうえで、それぞれの重要な知見を紹介しながら、受講生に意識研究のこれからあるべき姿を模索してもらうことを目指しました。この北海道大学で開講した講義の概要を紹介し、意識の様々な側面がエナクティブ・アプローチによってつなぎ合わせられること、そしてそれを記述するためにフリストンの自由エネルギー原理が有望であることについて議論します。

第3部:座談会 田口茂氏・吉田 正俊氏+松田 卓也 氏・塚本 昌彦 氏・小林 秀章 氏/ 質疑応答

【講師】田口 茂 氏

北海道大学大学院文学研究院教授、人間知・脳・AI研究教育センター長

2003年ドイツ・ヴッパータール大学で博士号(Dr. phil.)取得。山形大学准教授等を経て現職。専門は哲学、特に現象学。近年は数学者・神経科学者・認知科学者・ロボット研究者などとの共同研究により、意識・自己・自他関係などのテーマに取り組んでいる。著書に『現象学という思考』(筑摩書房)、『〈現実〉とは何か』(数学者・西郷甲矢人氏との共著、筑摩書房)などがある。

吉田 正俊 氏

北海道大学 人間知・脳・AI研究教育センター 特任准教授

2003年に博士(医学)を取得。生理学研究所助教を経て2020年より現職。専門はシステム神経生理学。霊長類における眼球運動を対象として注意や視覚的気づきの脳内メカニズムの解明を行ってきた。生理研在籍時から意識研究のシンポジウムを開催するなどの活動を行ってきたが、CHAINに異動してからは、現象学者や神経計算論の研究者と共同研究を行いながら意識を科学的に研究する方策を模索している。

14:40 – 15:30 座談会 

【登壇者  田口茂氏・吉田 正俊氏+松田 卓也 氏・塚本 昌彦 氏・小林 秀章 氏/ 質疑応答

【司会】保田充彦(株式会社XOOMS代表、ナレッジキャピタル・リサーチャー)

■シンギュラリティサロンとは

シンギュラリティサロンは、シンギュラリティに対する専門家、 一般市民の意識改革を促すべく、ナレッジサロンを 会場に2015年より講演や勉強会を重ねてきました。新型コロナウイルス「 自粛」後、2020年秋から、ナレッジキャピタル・SpringX超学校ONLINEでリアルとバーチャルを横断する新たなシンギュラリティサロンの活動を開始しました。こちらの「シンギュラリティサロン・オンライン(YouTube Live)」は、従来のシンギュラリティサロンのテイストを踏襲しつつ、「SpringX超学校ONLINE」よりも「コア」なテーマの講演と座談会をお届けします。

■お問い合わせ:シンギュラリティサロン事務局  admin@singularity.jp

主催

シンギュラリティサロン

共催

株式会社ブロードバンドタワー、一般社団法人ナレッジキャピタル