さる2016年2月27日(土)、グランフロント大阪・ナレッジサロンにてシンギュラリティ・サロン「第13回公開講演会」を開催しました。
第13回目となる「シンギュラリティ・サロンは、駒澤大学経済学部の井上智洋氏を講師に迎え、「第二の大分岐−汎用人工知能は雇用を奪うか?経済成長をもたらすか?人々は遊んで暮らせるか?−」というタイトルで、マクロ経済の視点からAIが経済や雇用に与える影響について話が行われました。
AIの登場が人々の生活や仕事にどのような影響を与えるのか? 雇用を奪うか? それとも遊んで暮らせるようになるのか? といった話題がとりあげられ、その背景にある技術や社会背景についても解説されました。
2030年には人と同じレベルの知性を持った汎用人工知能(以下汎用AI)が登場すると分析。それによって、第4次産業革命という大きな技術革命がもたらされると予想されています。それからさらに汎用AIが普及するまで15年ぐらいかかることから、著書などで予測されている2045年頃にはシンギュラリティが到来する可能性があるともしています。
その際に最も影響を受けるのが労働で、囲碁AIのAlpha Goのような特定の分野で能力を発揮する特化型AIによる技術的失業の時代がやってくるのではないかと言われています。また、汎用AIが登場するとほとんどの仕事がなくなる可能性があり、労働や雇用のあり方そのものを変える必要が出てきます。その大きな変化がおきるのが井上氏が提唱する「第二の大分岐」であり、それに備えて今から汎用AIの研究開発に取り組むことが国の成長にも大きく影響を与えるだろうと指摘されています。
シンギュラリティが到来することに対して多くの人が心配しているのが「AIに仕事を奪われるかもしれない」ということでしょう。それに対し井上氏は「2045年にはAIのおかげで全人口の1割だけが働き、残りは所得配分で遊んで暮らせるようになるかもしれない」という大胆な意見を持っており、「ほとんどの労働をロボットが行うようになれば、人々は労働から解放され、人生を充実させるためにしたいことをするだけでいいユートピアがやってくるかもしれないと」とも話しています。
ただし、遊んで暮らせるようになるには、所得を再配分する仕組みが必要で、その点は、成人全員に株を配るクーポン型市場社会主義や国民全員に最低限の生活費を支給するベーシックインカムなどの解決案があるのではないかとしています。さらに、大きな生活格差が生じないよう、資本を独占されない仕組みや税収のあり方を考える必要があり、「シンギュラリティをユートピアにするには、技術的な課題と合わせて現実に起きる問題を見つめられる専門家がもっと関わることが大事」であるとしています。
そのための活動の一つとして、井上氏は、前回のシンギュラリティサロンに登壇した高橋恒一氏とともに「AI社会論研究会」というAIが社会にもたらす影響についてさまざまな議論を行う勉強会を開催されています。
(報告:野々下 裕子)
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*講演資料: