シンギュラリティサロン#8 石黒 浩「人とロボットの境界」

さる2015年8月29日、グランフロント大阪・ナレッジサロンにて、シンギュラリティ・サロン「第8回公開講演会」を開催しました。

今回も、共催のナレッジキャピタルさんから、とてもクールなプレゼンテーションラウンジをお借りして、同じく共催のブロードバンドタワーさんからは「飲み物(アルコールあり)」無料サービスもご提供いただくという、極めて幸せな状況に盛り上がる中、スポットライトが照らすステージの上に現れたのは、人間なのかアンドロイドなのか区別がつかない、あの石黒浩教授!

人間そっくりのさまざまなアンドロイドを開発してきた石黒教授ですが、実はご自身はロボットに興味はなく、人間に興味があるからアンドロイドを作っているとは意外な事実。しかも、その裏には「人間嫌い」があるというのでさらに意外。しかし、お話が、人間としてのアイデンティティとは何か、「人の気持ちを考える」ことはできるのか、そもそも人間とは何かなど、どんどん哲学的な話題になっていく中、石黒教授のめざす方向がおぼろげながらわかってきたように思いました。石黒教授は哲学者なんですね!でも、ちょっと真面目な話が続くと、まわりを気づかってギャグを入れるなど、さすがエンターテイメント志向の大阪の研究者。というか、世界で石黒教授にしかできないパフォーマンス。これもまた、人間研究の成果なのでしょうか!

「アンドロイドは年を取らないので、僕も年をとってはいけないんです。それで、整形手術を受けたんですよ。年取ったアンドロイド作るより、自分が整形手術を受けたほうが安いから」と、冗談か本気か区別がつかないことを話す実物の石黒教授は、とにかくすごい存在感。講演の最初から最後まで、百名近くの聴講者は石黒教授の話に釘付け。数十秒に1回のペースで爆笑の渦に巻き込まれながら、まさに時間がたつのを忘れる、ハイクオリテイなショーのような雰囲気でした。会場といい、飲み物といい、そして、エンタメ性あふれるお話と言い、今までにない、今まででもっともハイテンションなシンギュラリティサロンでした。

*今回はプレゼンテーション資料の公開はありません。

シンギュラリティサロン#7 齊藤元章「Changing the Game ~次世代スパコン開発からAGI開発へ~」

さる2015年7月25日、グランフロント大阪・ナレッジサロンにて、シンギュラリティ・サロン「第7回公開講演会」を開催しました。

今回の講師は、たった10名ほどのチームで世界最先端のスーパーコンピュータ・チップを開発している齊藤元章さん(株式会社PEZY Computing/株式会社ExaScaler/UltraMemory株式会社)。

講演サマリは、松田先生がFacebookグループへ投稿された文章をそのまま掲載します。日本発の画期的なハードウェアへの、熱い期待が感じられる文章です!

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斉藤さんの公開講演会が無事終了しました。いや驚天動地のお話しでした。結論から先に書くと、地球の全人口73億人分のシナプス接続と処理能力を6リットル程度の体積内に収めることが可能になるというのです。

 それを可能にする技術は慶応の黒田教授が開発した磁界結合によるTCIというインターフェイスです。詳しくは日経エレクトロニクス2015年7、8月号の記事「Exa級の高性能機を目指し半導体・冷却・接続を刷新」(上下)の下、P75の注13にあります。

もしそれが可能であれば、ハード的にはシンギュラリティを達成する技術的基盤が、2045年とは言わず、あと10年程度で達成できるというのです。開発ロードマップ(上、P103、表2)を見ると、2019年からNeuro-Synaptic Processing Unitの試作と検証、2020年末にはサンプル出荷とあります。当初は上記ほどの密度はないと思いますが、それにしても人一人分のシナプス数100兆は詰められるのではないでしょうか。
講演でのお話は1) 経歴、2) スパコン、 3) AGIと分かれました。

1) 斉藤さんは本来は東大の放射線科のお医者さんです。それが診断機器を開発してシリコンバレーで医療系ベンチャー企業を立ち上げ、現在では300人を超える従業員を擁しています。しかし斉藤さんは、2011年にそこを辞めて、日本で画像解析用のCPUチップの開発を行います。それは1024コアのMIMDチップであるPEZYです。

2) ところが昨年あった理研の牧野淳一郎さん(宇宙物理学者、重力多体問題専用計算機GRAPE開発者)から、スパコン作りを勧められ半年あまりで完成させます。現在、高エネルギー研究所で2台、理研で1台稼働しています。速度は1PFLOPSの程度です。しかし大きさは大き目の洗濯機が5台といったものです。それは昨年のグリーン500で2位となり、今年は1位を取る予定です。2020年末までには、30-36PFLOPSのスパコンをたった4台の液浸槽で実現する予定です。ちなみに京コンピュータは、ほぼ10PFLOPSですが、その大きさはみなさんご存知の通りです。その近い先には1エクサフロップスのスパコンがあります。

3) ニューロチップの話は冒頭に述べた通りです。

日本の通弊ですが、斉藤さんが日本で開発した機器に対しては、日本の大企業は見向きもしなかったそうです。東大発ベンチャーのSHAFTは日本で支援を受けられず、DARPAの支援を受けて、Googleに買われました。これも東大発ベンチャーの斉藤さんはアメリカで成功して日本に戻ってくると、政府系の支援を受けられました。このようにスパコンチップの製作には成功したのですが、日本の専門家にはネガティブな人もいるようです。

全脳のコミュニティとしては、脳をエミュレートするハードは、近い将来、日本でできるはずだから、その上で走るアルゴリズムを作ることが大切です。
またPEZYのスパコンも、独自チップであるので、ソフト面はまだ弱いと思われます。やはり日本のコミュニティが(足を引っ張るのではなく)、総力を挙げて支援すべきと思います。日本発の技術を支援しないで、つぶすのがお得意の日本の体質を変えなければ、日本は確実にダメになります。

(by 松田卓也)

*プレゼンテーション資料ダウンロード:

シンギュラリティサロン#6 山川 宏「全脳アーキテクチャ実現への長き道のりをいかに支えるか」

さる2015年7月5日、グランフロント大阪・ナレッジサロンにて、シンギュラリティ・サロン「第6回公開講演会」を開催しました。

今回は、ドワンゴ人工知能研究所の山川宏所長がご登壇、「全脳アーキテクチャ実現への 長き道のりをいかに支えるのか − WBAIが目指すべき姿とは −」というタイトルでお話いただきました。ドワンゴ人工知能研究所は企業組織ですが、直近のビジネスが目的ではなく、「次世代のための贈り物となるような人工知能」を創造することを目指しているとのこと。その成果は学会等で公表し、開発ソフトはオープンライセンス(Apacheライセンス等)で公開するなど、オープンな活動を行っていくそうです。

山川さんらが研究する汎用AIとは、設計時の想定を越えたあたらしい問題を解決できる、いわば「ジェネラリスト的AI」のことで、AI研究は特化型から汎用型へ進んでいると山川さんは指摘。この特化型AIから汎用AIへの架け橋になるのが「領域知識学習(学習を可能とするための知識を学ぶ方法)」であり、人間の脳では大脳新皮質がこの領域知識学習をつかさどっているとの知見を紹介されました。(この点で、「深層学習は、機械学習においては平均的イノベーションだが、人工知能にとってはクリティカルなイノベーションである」と考えているとのこと。)このような汎用AIを実現するベストなアプローチが、脳全体のアーキテクチャをヒントにして人間並みの汎用人工知能を創る「全脳アーキテクチャ(Whole Brain Architecture:WBA)」である、というのが山川さんらの主張です。

WBAの中心となる仮説は「脳はそれぞれよく定義しうる(アルゴリズムに書き下しうる)機能を持つ(一部未知を含む)機械学習器が一定のやり方で組み合わされる事で機能を実現しており,それを真似て人工的に構成されたできる限り高い粒度での(抽象度の高い)機械学習器を組み合わせることで、人間並みかそれ以上の能力を持つ汎用の知能機械を構築可能である」というもの。山川さんはこれを、深層学習における成功を脳全体に拡張するようなもの、ととらえているそうです。

また、WBAは国内に関連分野の研究者が数多くおり、「物量よりも頭脳勝負」の研究分野であることから、日本のポテンシャルを活かしやすく、日本発のAIとして大きな可能性があるとのことです。このWBA研究の裾野をひろげるため、「NPO法人・全脳アーキテクチャイニシアティブ(WBAI)」を発足し、基礎研究だけでなく、情報公開や分野連携、人材育成や啓蒙活動に取り組むとのこと。ハッカソンや若手を中心とした勉強会開催などの活動も行っていくそうです。WBAIが、さまざまな人が参加する、WBA開発の共通プラットフォームになることが期待されます。

最後に、汎用AIのインパクトは”HELPS”ーHumanity(哲学)、Economics(経済学)、Legal(法学)、Political(政治学)、Social(社会学)の観点が必要。技術者以外の幅広い分野の連携を通じて、世の中全体として考えるべきとの提言もありました。「共有財産としての多様な人工知能と,時に拡張された人類によって生態系ーEcSIA(Ecosystem of Shared Intelligent Agents )ーが形成される」という未来観のもと、山川さんは2030年(もしかしたら2020年代前半)には汎用AIが開発されると予測。人類がAIとともに歩む未来にむけて、その素地を醸成する活動が今から必要だ、と述べられました。

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本公開講演会は、ナレッジサロンを運営する一般社団法人ナレッジキャピタルの共催をいただくことになり、今回はナレッジサロン会員も多数参加、会場もプレゼンラウンジを使わせていただきました。定員100名の同ルームはほぼ満員で、福島からのオンライン参加もあり、エネルギッシュな山川さんの講演の後には、会場・ネットからも多数の質問が出て、いつも以上に熱気あふれる公開講演会となりました。すばらしい会場の提供と運営にご協力いただきましたナレッジキャピタルのスタッフの方々に感謝申し上げます。

*プレゼンテーション資料ダウンロード:

シンギュラリティサロン#5 白山 晋 「ディープラーニングによって人工知能は実現できるか」

さる2015年6月20日、グランフロント大阪・ナレッジサロンにて、シンギュラリティ・サロン「第5回公開講演会」を開催しました。

今回は、東京大学の白山晋さんを講師に迎え、今、話題のディープラーニングについてお話をいただきました。

前半はニューラルネットワークからディープラーニングにつながる、技術的な解説。ディープラーニングは、ニューラルネットワークの層が深くなったものとみなせること、また、ニューラルネットワークは脳の情報処理にヒントを得たものだが、いったんモデル化された後は純粋に数理的な処理の問題となり、生物の脳で行われている情報処理と同一である保障はない、ということなどを、数式と実例を交えて丁寧に説明してくれました。

後半の、「人の知能を定量的に測ることができるか」という問題については、少なくとも行動を数値化することはでき、そこから知能の定量評価ができるかもしれない、という仮説をヒトの視覚を例にしてお話いただきました。

ディープラーニングはパラメータ依存性、つまりノウハウに依存する部分がまだ大きいことなどから、白山さんは、ディープラーニングで強い人工知能をを実現するのは難しいのではないか、という見方。しかし、逆に言えば、ディープラーニングのパラメータ探索が脳の情報処理の解明につながる可能性もあり、また、ニューラルネットワークはすでに産業のさまざまな分野で実用化されていて、脳科学の知見をうまく取り入れればディープラーニングが発展する可能性もある。まずは応用範囲を拡大して使っていくことが大事なのでは、という提言もありました。

現在「バズワード」的に使われる「ディープラーニング」という技術を実践的・数理的に分析したお話には、多くの示唆がありました。比較的数式が多いプレゼンテーションでしたが、それゆえに、じっくりと勉強できる貴重な資料です。

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シンギュラリティサロン#4 松田卓也 X 塚本昌彦「私たちはシンギュラリティへの道をどう進むべきか」

さる2015年5月23日、グランフロント大阪・ナレッジサロンにて、シンギュラリティ・サロン「第4回公開講演会」を開催しました。

今回は当サロンのリーダーである松田卓也氏・塚本昌彦氏の登壇の「ダブル登壇」。以前おこなわれた両氏の講演をふまえ、「私たちはシンギュラリティの道をどう進むべきか」というテーマを設定、テーマに関するそれぞれの意見をショート・プレゼンで述べた後、来場者の質疑応答も加えた、はじめての対談形式のサロンを企画しました。

きたるべきAI時代にそなえ「プチ天才」を集めた少数精鋭チームを作るべき、という松田氏と、まずはウェアラブルから始めて、埋込み型デバイス、ナノボット・マインドアップローディングへと進むべきという塚本氏。「人類は『超知性』へと進化する」という方向性は一致する中でも、部分的には微妙な違いもあり、今後、人工知能に関するさらに枠をひろげた議論がますます重要になりそうです。

あいかわらずの鋭いユーモアも交えたお二人のトークの後は、ナレッジサロンのソファに移動して恒例の意見交換を行いました。

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シンギュラリティサロン#3 一杉裕志 「ヒト型AIは人類にどのような影響を与えうるか」

さる2015年4月18日、グランフロント大阪・ナレッジサロンにて、シンギュラリティ・サロン「第3回公開講演会」を開催しました。

今回のテーマは、産業技術総合研究所の一杉裕志氏による「ヒト型AIは人類にどのような影響を与えうるか」。一杉氏は、人工知能、神経科学、認知科学の領域を横断した汎用人工知能(AGI)開発をめざす産学官連携グループ、『全脳アーキテクチャ -whole brain architecture-』のリーダーの一人でもあります。

一杉氏は冒頭「人間の脳のしくみは、一般の人が思っている以上に解明されている」と言い、これまで書かれた論文を検索するだけでも十分な情報が得られると主張。プレゼンテーション前半の技術面の解説では、人間特有の大脳皮質は6層からなるコラム構造をもっており、その情報処理アルゴリズムはベイジアンネットで説明できるという知見を紹介。これを元に開発されるヒト型AIは、人間の脳と同じ思考特性をもち、人間と同じように学習していくこと、そして、ヒト型AIは人間社会のしくみに適合しやすく、将来は機械的AIよりも早く、安く開発できるだろうと述べられました。

プレゼンテーション後半は、ヒト型人工知能が社会に与える影響と安全面での対策について、さまざまな面から問題提起と解決案を提示。ヒト型AIと社会の関係を、幅広い視点に独自の見解を交えながら、わかりやすくお話いただきました。「人が同情しやすいAI(ロボット)は危険。かわいくないAIを開発するような法規制が必要」という提言など、いずれも「目から鱗が落ちる」ようなユニークな提言でした。

お話に触発された会場の参加者からも多数の質問・意見がだされ、熱気に満ちた2時間でした。

*プレゼンテーション資料ダウンロード:

シンギュラリティサロン#2 塚本昌彦「シンギュラリティとは何か?〜ウェアラブルから始まる人類の未来」

さる2015年3月2日、グランフロント大阪・ナレッジサロンにて、シンギュラリティ・サロン「第2回公開講演会」を開催しました。

第2回の講演は、”ウェアラブルの伝道師”塚本昌彦氏による「シンギュラリティとは何か?〜ウェアラブルから始まる人類の未来」。

「世の中一般のシンギュラリティの定義に異論がある」という塚本氏は、シンギュラリティの主役は人工知能ではなく「超知能」であると主張、シンギュラリティとは、より広く「科学技術の発展曲線が特異点となる日」であり、超越(トランセンデンス)するのは人工知能ではなく人類である、という論旨をユーモアを交えて展開されました。

そして、結論は「人類が超越した超知能への第一歩は『ウェアラブル』から始まる」。さすが「ウェアラブルの伝道師」です!

講演後は「人工知能(超知能)のリスクは今までの科学技術とどう違うのか」、「人工知能(超知能)ほんとうに意識をもつことができるのか」といったディープな質疑応答が続き、閉会後もナレッジサロンで(お酒を飲みながら)塚本・松田氏と出席者の間で熱い議論がかわされました。

*プレゼンテーション資料ダウンロード:

シンギュラリティサロン#1 松田卓也「シンギュラリティへの道」

シンギュラリティ・サロン「第1回公開講演会」を開催しました。

記念すべき第一回の講演は、松田卓也氏による「シンギュラリティへの道」。

シンギュラリティとは何か?という解説に始まり、SF映画の中のシンギュラリティ、シンギュラリティ概念の歴史、そして超知能への道まで、シンギュラリティに関するさまざまな知識・情報がつまった、中身の濃い1時間半でした。

講演後は会場から多数の質問があり、活発な質疑応答も行われました。

*講演の概要はこちらをご覧ください。
*プレゼンテーション資料ダウンロード:

第一回シンギュラリティ研究会

 

Collective Intelligence by Hamed “Kay” Khandan
Self Introduction
Introduction
Computing Paradigms
Two Important Lessons From Minsky
Collective Intelligence
A Guided Tour to Collective Intelligence
The Mother of All A.I.
Intelligence In Cellular Automata
Artificial Life
Collective Intelligence via Massive Particles
Collective Intelligence in Distributed Robotics
Collective Intelligence via Ensemble Methods
My Contributions
Motivation
New Software Concept
Start with Philosophy
From Object-Oriented to Agent-Based
What is KnoRBA?
KnoRBA Architecture at a Glance
Architecture of Program in KnoRBA: Unlayered & Decentralized
KnoRBA fo Java
KnoRBA for C++ & HPC
Cross-Platform Ping Pong
Bubbles on Linux
What does this work mean, so far?
Sociometric Computing
Capitalist Society
Contract Procedure
Social Behavior (Micro-Level)
In Action
Current Project

シンギュラリティ「プレ」研究会

1. 全自動ブックスキャナの開発
2. Preferred Infrastructure を友人と起業
3. 並列計算機向けプログラム生成・自動チューニング言語Paraisoの開発
4. 汎用・お手軽最適化インターフェイスcmaesの開発
5. Preferred社のオンライン機械学習Jubatusを応用したアセンブリ最適化機y-schedularの開発
6. アセンブリ最適化技術Nanoblock Unrollの開発
7. 物理量の次元を扱えるHaskellの型システムunitsの開発