「ChatGPT」は、2022年11年に OpenAI がリリースしたテキスト生成 AI で、あたかも人間を相手にしているかのような自然な会話ができること で注目を集めました。膨大なパラメータ数からなる深層ニューラルネットワ ークに巨大なコーパス (文例集) をデータとして与え、膨大な計算を実行することで、この AI は自然言語を取り扱う能力を獲得しました。このような仕組みを「大規模言語モデル (Large Language Model; LLM)」といいます。
37歳の若さで OpenAI の CEO を務める Sam Altman 氏は、大規模自然言語モデルを活用して医療サービスや教育サービスを展開するスタートアップが、今後、百兆円規模にまで急成長すると予想している。つまり、AI の手法を研究開発して API 提供するプレイヤーと、それを呼び出す上位の プログラムを書いてビジネスに活用するプレイヤーとがタッグを組むことで 知能のコストがほぼゼロになり、産業・ビジネスのあり方に劇的な変化を もたらし、社会や生活にも影響を及ぼす可能性がある。
※参考動画:
– シンギュラリティサロン「OpenAI CEO Sam Altman氏のインタビュー動画について」
– “OpenAI CEO Sam Altman | AI for the Next Era”
「人工知能」(AI) について考える時、そもそも「人間知能」とは何だったのか、という問いを考えざるを得ない。「AIは人類社会に革命を起こす」と私も思うが、これは「人間知能」の謎がますます深まることを意味する。Google/DeepMind社のデミス・ハサビス氏は講演 “Human AI is Decades Away,But We Need to Start the Debate Now”(2015年)の中で 、AI研究の究極の目的の、さらに先、についても言及している。彼は「宇宙で最も深淵な謎」と題したスライドの中で、こう述べる:”By building AI and comparing it to the mind we may unlock its mysteries. To truly find the Theory of Everything we may have to Solve Intelligence first.” そこでこの講演では、「人間知能」の謎を前提に、文系的なヒューマニズム(人間中心主義)を横目で見ながら、「AIは人類社会に革命を起こすと思うが故に」、「人間知能」とは何かという古典的な問題について、再考を試みたい。
プロフィール
1978年6月24日京都生まれ。1997年私立ヴィアトール学園洛星高等学校卒業。2006年京都大学工学研究科博士課程修了。博士(工学・京都大学)。2005年より日本学術振興会特別研究員(DC2)、2006年より同(PD)。2008年より立命館大学情報理工学部助教、2010年より同准教授。2015年より2016年までImperial College London客員准教授。2017年より立命館大学情報理工学部教授、また、パナソニック客員総括主幹技師としてAI研究開発に携わる(国内初の大学から企業へのクロスアポイントメント事例)。専門は人工知能、創発システム、認知発達ロボティクス、コミュニケーション場のメカニズムデザイン。記号創発システムという概念を提唱し、また記号創発ロボティクスと呼ばれるAIやロボットを作ることにより人間のコミュニケーションの本質的理解につなげる研究領域を創成している。様々なプロジェクトや産学連携を通して機械学習技術の応用に関する研究に従事。また全国に広まる書評を通じたコミュニケーションの場作り手法であるビブリオバトルの考案者でもある。
計測自動制御学会学術奨励賞、システム制御情報学会学会賞奨励賞、論文賞、砂原賞など受賞。
1993年早稲田大学理工学部卒業。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学助手、理化学研究所脳科学総合研究センター研究員、京都大学大学院情報学研究科講師、同准教授を経て、2012年より早稲田大学基幹理工学部表現工学科教授。博士(工学)。2009年-2015年JSTさきがけ領域研究員、2017年より産業技術総合研究所人工知能研究センター特定フェロー。同年より日本ディープラーニング協会理事。2020年より早稲田大学次世代ロボット研究機構AIロボット研究所所長。IEEE ICRA2021 Best Paper Award In Cognitive Scienceなど受賞。
Dr Tsuchiya was awarded a PhD at California Institute of Technology (Caltech) in 2006 and underwent postdoctoral training at Caltech until 2010. Receiving a PRESTO grant from Japan Science and Technology (JST) agency, Dr Tsuchiya returned to Japan in 2010. In Jan 2012, he joined the School of Psychological Sciences at Monash University as an Associate Professor. Since 2013, he is an ARC Future Fellow. His main research interest is to uncover the neuronal basis of consciousness. Specifically, he focuses on 1) the scope and limit of non-conscious processing, 2) the relationship between attention and consciousness, and 3) the neuronal correlates of consciousness by analysing the multi-channel neuronal recording obtained in animals and humans and 4) testing a theory of consciousness, in particular, integrated information theory of consciousness.
今回のシンギュラリティサロンの講師は、「シンギュラリティサロン#30(2018年7月21日、他)」「シンギュラリティサロン #33「意識をめぐる大冒険」(2019年3月10日)」に登壇いただいた、東京大学の渡辺 正峰さん。渡辺さんは、アカデミアで脳科学を研究する一方、「意識のアップロード」を目指すスタートアップ、MinD in a Device社を設立し、10年以上に渡る研究成果 をもとにした意識のアップロード構想の実現へむけて、精力的な活動を展開されています。
[1] Watanabe, M., K. Cheng, Y. Murayama, K. Ueno, T. Asamizuya, K.
Tanaka and N. Logothetis (2011). “Attention but not awareness
modulates the BOLD signal in the human V1 during binocular
suppression.” Science 334(6057): 829-831.
[2] Watanabe, M.; Nagaoka, S.; Kirchberger, L.; Poyraz, E.; Lowe, S.;
Uysal, B.; Vaiceliunaite, A.; Totah, N.; Logothetis, N.; Busse, L. et
al.: Mouse primary visual cortex in not part of the reverberant neural
circuitry critical for visual perception. (in revision)
[3] Watanabe, M. (2014). “A Turing test for visual qualia: an
experimental method to test various hypotheses on consciousness.” Talk
presented at Towards a Science of Consciousness 21-26 April 2014,
Tucson: online abstract 124
[4] 渡辺正峰(2017)「脳の意識 機械の意識」中央公論新社
[5] 渡辺正峰(2010)「意識」『イラストレクチャー 認知神経科学―心理学と脳科学が解くこころの仕組み』村上郁也編 、オーム社
[1] Watanabe, M., K. Cheng, Y. Murayama, K. Ueno, T. Asamizuya, K.
Tanaka and N. Logothetis (2011). “Attention but not awareness
modulates the BOLD signal in the human V1 during binocular
suppression.” Science 334(6057): 829-831.
[2] Watanabe, M.; Nagaoka, S.; Kirchberger, L.; Poyraz, E.; Lowe, S.;
Uysal, B.; Vaiceliunaite, A.; Totah, N.; Logothetis, N.; Busse, L. et
al.: Mouse primary visual cortex in not part of the reverberant neural
circuitry critical for visual perception. (in revision)
[3] Watanabe, M. (2014). “A Turing test for visual qualia: an
experimental method to test various hypotheses on consciousness.” Talk
presented at Towards a Science of Consciousness 21-26 April 2014,
Tucson: online abstract 124
[4] 渡辺正峰(2017)「脳の意識 機械の意識」中央公論新社
[5] 渡辺正峰(2010)「意識」『イラストレクチャー 認知神経科学―心理学と脳科学が解くこころの仕組み』村上郁也編、オーム社