「top」タグアーカイブ

シンギュラリティサロン#48 山川 宏「比較可能性から考える知能」(ZOOM開催)

■講演中の質問(一部)と講師回答

Q.整列構造とは,「帰納バイアスを成立させうるデータ関係性」という意味でしょうか?

山川> おそらく帰納推論を成立させうるための、帰納バイアスというのが正確そうです。

Q.外界と等価比較するためには、きっかけとして、生得性の整列構造も必要ではないでしょうか?

山川> そのとおりかと思います、それを実現しているのがセンサであり。特に動物は、目や耳といったアレイセンサを発明したことでそこに含まれる整列構造を利用できるようになりました。

Q.値集合1と値集合2から入力を受けているPは、P1(), P2(), … は値集合Xの型の組み合わせごとに定義されるのでしょうか?

山川> 異なる値集合を利用するというのは、視覚と聴覚のような対比となるため大きくPk()の形はことなります。これに対して同じモダリティ内でのPk()の違いは参照する画素が違う程度で同じものを使うことが多くなります。

Q.「高次の客体化 = 後天的な概念の獲得」と理解していますが、これを後から読み出す(概念を使って思考する)は何か考えられていますでしょうか?後から思考で参照できれば、シンボルのみで「猫とは何たるか」を真に理解していなくても、知能として成立しているという見方はできないでしょうか。

山川> 今回、高次の客体化で得られる概念は、おっしゃるとおり、原則的には後天的です。ただしそれはまだシンボルとは接続されていなくても良いものです。つまり、シンボルを用いない動物であってもかなり高度な判断を行えますが、それは、こうした高次の客体化で得た概念を利用するからだと考えています。
逆に、大量の記号の世界に生きている現在の我々やAIは、猫について辞書やインターネットの言語情報をつかって答えることができることは既知かと思います。

Q.CNN -> FC でClassifyだと、普通の画像分類の説明ではないでしょうか?比較可能性はFC層で放棄するのであれば、なぜ途中までは大事にするのでしょうか?

山川> 視覚情報には、階層的な局所性がありそれが画素間の指定関係で表現されます。この声質によりDivide and Conqureに処理をすることに有効となります。視野内においてその性質を使い切るまではCNNで処理し、その先はFCという分業がなされていると、私は考えています。

Q.比較可能性というのは、どれでも、どのレイヤでも、同じか、というと、そんなことはありませんよね。それぞれに、異なる比較可能性があるのでしょうか?

山川>比較可能性は、一般的にはレイヤ毎に異なるものと考えるのが自然であると考えています。ただし、視覚情報処理では拡大縮小の不変性をあつかう必要があるという事情があり、隣接する層間で比較できるようにしておく必要がありそうです。

Q.視覚刺激の場合は「比較可能性の維持 = 回転や倍率の対称性維持」で分かるのですが、先ほどの「ピカと光ってドンと鳴ったら~」のような、型の異なる刺激にも「値読み取り手続き(P)」で得られた比較可能性はどのような意味を持つのでしょうか?

山川> 基本的に、異なるモダリティ間では比較ができません。雷という概念は、光と音を含んでおり、一方のモダリティから他方を推測できます。しかしそうした連想ができたからと言って、光と音を比べているわけではないというところが私の強調したい点です。

Q.ピカとゴロが比較できないというのは素人ながら直感的には理解できました。ゴロのでかさで雷の大きさを認識するのはあくまでゴロ同士の比較になるかと思いました。

山川> はい、それが述べたいことです。

Q.共感覚はどうでしょうか?匂いから色をイメージするなど。

山川> それは雷の例と同じかと思います、複数のモダリティ情報の共起を、結合によって連想する処理により実現可能かと思います。

Q.光刺激の中の大きさと音刺激の中の大きさは比較できますよね……雷も

山川> はいそのとおりかと思います。

Q.センサーからの情報に対して特徴抽出を繰り返すことで、「ゲージ不変な実態」を抽出するメカニズムを明確化しようとしているのでしょうか?その「実態抽出」に「記号」を付け、知性にするとの事でしょうか?

山川>本発表では、アレイセンサの信号に対して、Self-supervised学習などを行うことで、不変性の高い表現空間を取り出す働きをメトリック形成と読んでいます。これは、物理学の「ゲージ不変」を取り出すこととにた雰囲気かもしれません。人間の視覚の例でのべるなら、中心/周辺視野や、視野の歪みがあっても、外界を観察するデータに基づいて、視野内でとらえたある棒の長さは一定であるように認識できるようチューニングするということです。

Q.ネオコグニトロンで,初段は隣の画素ですが,後段になるとかなり遠方の関係を見ていることになりますが,それをどう解釈するのでしょうか?

山川> 画素が遠方であっても指定関係を特定すること自体は機構的には問題ないでしょう。その解釈については、画像空間中のより大局的な関係であるということかと思います。

Q.比較可能性は写像が存在する、というような意味かな、と思うと、整列構造は同型写像なのかな、と思いながら聞いていましたが、ちょっと違うでしょうか。

山川> 同型写像はそこに含まれる値に関わるものです。これに対して整列構造それ自体は値については述べていません。ただし有益な整列構造を選択する段階では、外界にをモデル化するのに適した整列構造が優先的に選択されるために、同型写像と関わりが生じます。

Q.例えば,TRANSFORMERは,客体化の一形態という解釈になるでしょうか?それともメトリック生成?

山川>  Transformerを自然言語処理に用いた場合、典型的には文法を反映したモデルに基づいて単語にアテンションを向けます。これは、典型的な客体化であると思います。ただしこのレベルでは画像のように境界を細かく変化させるのではなく、単語という要素をポインティングしています。ですからそのポインティング、時間シークエンス上で飛び飛びのポジションを選ぶことができます。

================================================
■講演概要

シンギュラリティ(技術的特異点)とは、将来、 人工知能の能力が人類のそれをはるかに超え、 その結果として科学技術が猛烈なスピードで発展しはじめるときのこと。人間を超越する「超知能」が生まれたとき、 人類の歴史はどこへ向かっていくのでしょうか。

今回のシンギュラリティサロンは、全脳アーキテクチャ・イニシアティブの山川 宏さんをお迎えし、「比較可能性と知能」をテーマにお話いただきます。「比較可能性をどのように流用/転用するからが知的システムの能力拡大において重要なテーマとなる」という山川さんに、人工知能研究の最先端から、興味深いトピックを届けていただきます。

* 山川 宏さんの過去の講演

シンギュラリティサロン#6 山川 宏「全脳アーキテクチャ実現への長き道のりをいかに支えるか」
第2回シンギュラリティシンポジウム ・パネルディスカッション「日本からシンギュラリティを起こすには〜その具体的な方策」 
シンギュラリティサロン#40 山川 宏「人間社会を支えるエコシステムとしての自律AI社会 – 存在論的リスクを克服するために -」

■開催日時と申込み

【日時】2021年5月30日(日)

【方法】ZOOMでのオンライン配信
※視聴URLは、申し込みいただいた方に返信メールにてご連絡します。
 ZOOMリンクは参加者本人のみご使用ください。リンクの転送はお控えくださいますようお願いします。

【参加費】 無料

【参加者】約110名

■タイムスケジュールと概要

13:30 – 13:40 冒頭挨拶と講師紹介

13:40 – 14:40 講演 「比較可能性から考える知能」

【講師】山川 宏(やまかわ ひろし)氏 
 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ代表 https://wba-initiative.org/

プロフィール
1992年東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了。工学博士。同年(株)富士通研究所入社。1994年から2000年まで通産省RWCプロジェクトに従事、2014年から2019年3月まで(株)ドワンゴ
ドワンゴ人工知能研究所所長。現在、特定非営利活動法人全脳アーキテクチャイニシアティブ代表、東京大学大学院
工学系研究科特任研究員。人工知能学会(汎用人工知能研究会主査)、電子情報通信学会、日本認知科学会、日本神経回路学会などの各学会員。専門は人工知能、特に、汎用人工知能、全脳アーキテクチャ、概念獲得、意見集約技術など。産総研人工知能研究センター客員研究員、電気通信大学大学院客員教授、近畿大学情報学研究所知能システム部門長(客員教授)、理化学研究所生命システムセンター主管客員研究員、東京大学医学部客員研究員。共訳書に、「パターン認識と機械学習」、共著書に「人工知能とは」、「宗教と生命」、「AI時代の憲法論」などがある。

【講演概要】
四項類推では、4つの要素「A:B=A’。B’」と表されます。これを構成する関係は、Aに対してBを指定する関係(指定関係)と、同様にA’に対してB’を指定する関係、さらにその2つの指定関係が同じであること(指定関係等価性)です。こうした類推は、AかBのどちらかに、すでに多くの知識がある場合に有効です。

対して、世界から規則性(知識)を獲得できる帰納的推論を行うには、もう一つの関係が必要です。AとA’およびBとB’が比較可能ということです(比較可能性)。比較可能ということは、物理学では、単位系によって明示されます(例えば、重さと長さを比較することはありません。)。さらにAとBだけでなく、C、D、E、F…と大量のデータが必要になります。結局、帰納的推論には、指定関係、指定関係等価性、比較可能性の3つが必要であり、これを私は整列構造と呼んでいます。ですから、世界から知識を獲得する範囲を拡大するには、より柔軟に整列構造を作り出すことがキーとなるわけです。

これまでの研究から、指定関係やその等価性は比較的自由に設計できることが明らかになっています。一方、比較可能性は、基本的には物理的なセンサーの特性に帰着します。そう考えると、我々が抽象的な思考を行う場合であっても、その概念が実世界に接地しているなら、それはセンサにおける比較可能性に根を持つものであるはずです。つまり観測される要素の間に存在する比較可能性をどのように流用/転用するからが知的システムの能力拡大において重要なテーマとなるはずです。

そこで今回は、比較可能性の観点から、知能について議論します。ひとつには、近年発展している、Transformer等のアテンションを用いたニューラルネットワークと比較可能性についての議論を行います。さらに、カントの述べていた悟性や、C.S.パースがが述べていたhypoiconといった、哲学的観点からも触れたいと思います。

参考資料:https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjsai/JSAI2020/0/JSAI2020_2D6OS18c04/_article/-char/ja/

14:40 – 15:30 座談会 

【登壇者】山川 宏 氏 + 松田 卓也氏(神戸大学 名誉教授)・塚本 昌彦氏(神戸大学大学院工学研究科 教授)・ 小林 秀章 氏(セーラー服おじさん)

【司会】保田充彦(株式会社XOOMS代表、ナレッジキャピタル・リサーチャー)

シンギュラリティサロン#40 山川 宏「人間社会を支えるエコシステムとしての自律AI社会 – 存在論的リスクを克服するために -」

講演

13:30-15:00 講演: 「人間社会を支えるエコシステムとしての自律AI社会 – 存在論的リスクを克服するために -」

15:00-15:30 自由討論

講師 
山川 宏 (特定非営利活動法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ 代表)

定員 100名(先着順・入場料無料 ※会場のナレッジサロンの規約により、18最未満の方は参加できません。また18歳でも高校生は参加できません。ご了承ください。)

講演概要
 深層学習の台頭を契機に、高度AIがもたらすシンギュラリ ティに関する議論が活性化した2014年から、 約5年が経過しました。当時における長期的な議論は、人を超える AIに対する脅威や不安を起点とする論点が主であった。 しかしながら、その後において議論が深まるにつれて、AIに限ら ず様々なEmergent Technologyを、誰かが誤用・悪用することによる Agential Riskの急増から生じる危険性のほうが現実的な問題であると認 識されつつある。人類の存続にも影響を与えかねないこうしたリス クを制御するには、むしろAIを積極的に利用したグローバル監視 の可能性も真剣に検討され始めている。もしそうであれば、 私たちは存続のために、一定の範囲で、自由やプライバシーを手放 すことに同意せざるを得ないかもしれないし、それを許容する新た な共通認識を構築する必要があるかもしれない。同時に、 そうした、共通の価値にそって人々を支え、包括的にリスクを低減 するエコシステムを構築するためにロバストなAI社会を開発する 必要も生じるとおもわれる。

講演資料:

シンギュラリティサロン #39 島崎 秀昭「脳の理論の過去・未来:ベイズ脳仮説からニューラルエンジンへ」

講演
13:30-15:00 講演: 「脳の理論の過去・未来:ベイズ脳仮説からニューラルエンジンへ」
15:00-15:30 自由討論

講師 
島崎 秀昭 (京都大学大学院情報学研究科 特定准教授)

定員 100名(先着順・入場料無料 ※会場のナレッジサロンの規約により、18最未満の方は参加できません。また18歳でも高校生は参加できません。ご了承ください。)

講演概要
本講演では脳の理論的理解を目指してきた計算論的神経科学・理論神経科学の発展の歴史を,それを支える主要な実験結果や他分野との関わりとともに紹介する.自然刺激への適応に基づく古典的な認識の理論から,外界のモデルを脳の中に持つとするベイズ脳仮説,そして環境に対する働きかけを推論の枠組みに取り入れ認識と行動の統一的理解を目指す自由エネルギー原理.これらがどのような実験事実に基づき(あるいは基づかず)構築され,情報理論・機械学習・統計物理といった他分野とどのような関わりのなかで発展してきたかを解説し,今後の展望を述べる.発展的試みのひとつとして動的にベイズ推論を実現する脳を情報論的なエンジンとして扱い,注意・意識的体験を含む脳の高次機能の説明を試みる新しいパラダイム「ニューラルエンジン仮説」を紹介したい.

参考文献
島崎秀昭. 認識と行動の適応原理. 日本神経回路学会誌 (2018) 25(3) 86-102
島崎秀昭. ベイズ統計と熱力学から見る 生物の学習と認識のダイナミクス 日本神経回路学会誌 (2019) 26(3) 72-98

主催
シンギュラリティサロン

共催
株式会社ブロードバンドタワー、一般社団法人ナレッジキャピタル

シンギュラリティサロン #38 河合 祐司「脳の構造と機能をつなぐ構成的神経科学:脳から身体,社会へ」

講演
2019/10/05 (土)
13:30-15:00 講演: 「脳の構造と機能をつなぐ構成的神経科学:脳から身体,社会へ」
15:00-15:30 自由討論

講師 
河合 祐司 (大阪大学 先導的学際研究機構附属 共生知能システム研究センター 特任講師)

定員 100名(先着順・入場料無料 ※会場のナレッジサロンの規約により、18最未満の方は参加できません。また18歳でも高校生は参加できません。ご了承ください。)

講演概要
 脳神経ネットワークは複雑である.決してランダムではなく,完全に構造化されているわけでもない,いわゆるスモールワールド性をはじめとした複雑ネットワークとして脳を捉えることができる.脳神経ネットワークの構造的特徴が近年のコネクトーム研究によって詳らかにされてきたが,その構造が有する機能は未だあまり理解されていない.本講演では,ニューラルネットワークのシミュレーションを用いて,脳構造の有する機能を特に神経活動の複雑性の観点から構成的に理解することを目指す研究を紹介する.さらに,脳はそれ単体ではたらく器官ではない.その外に広がる身体や社会に目を向け,(人工)脳の可能性を引き出すシステムについて議論したい.

主催
シンギュラリティサロン

共催
株式会社ブロードバンドタワー、一般社団法人ナレッジキャピタル

シンギュラリティサロン #37 浅川 伸一「自然言語処理と画像処理における最近の注意モデル」

講演
2019/09/22 (日)
13:30-15:00 講演: 「自然言語処理と画像処理における最近の注意モデル」
15:00-15:30 自由討論

講師 
浅川伸一 (東京女子大学 情報処理センター)

定員 100名(先着順・入場料無料)

講演概要
 昨年, 自然言語処理分野では人間を凌駕する性能のモデルが複数提案され た。これらに関するおびただしい数の解説論文や記事が書かれている。 これは 2014 年に画像処理分野で畳み込みニューラルネットワークが人間を超える 性能を示し,アルファ碁が人間の世界チャンピオンを破った事件と比肩しうる出来 事であろう。本発表では, これら自然言語処理分野で注目を集めている注意モデルについて展 望を与えることを試みる。注意は,認知心理学,神経心理学, 生理学などの分野で知見が蓄積されてきた。 たとえば注意にはボトムアップ型とトップダウン型の注意が存在し,神経対応物も見いだされている。 これらの知識と最近の自然言語処理分野で提案された注意モデルとを比較し整理することは意味があると考え る。

主催
シンギュラリティサロン

共催
株式会社ブロードバンドタワー、一般社団法人ナレッジキャピタル

シンギュラリティサロン #36 甘利 俊一「脳と人工知能:シンギュラリティは起こるのか?」

講演
2019/07/07
13:30-15:00 講演: 「脳と人工知能:シンギュラリティは起こるのか?」
15:00-15:30 自由討論

講師 
甘利俊一 (理化学研究所栄誉研究員、東京大学名誉教授)

定員 100名(先着順・入場料無料)

講演概要
 人工知能が素晴らしい発展を遂げ、 産業構造と文明を変えるかもしれないとまでいわれている。では、 どのような文明が待っているのだろうか。本講演では、 人工知能の研究の歴史から始め、人工知能、 深層学習の素晴らしい発展を見るとともに、今のAIの問題点を考 察する。今のままでは、これは人の知能にはるかに及ばない。 その克服の方向を探るには、脳の仕組みに学ぶ必要がある。

 脳は、永年の進化の歴史が生み出した傑作である。 その仕組みを垣間見るとともに、 人工知能がまだ汲み取っていない、脳の機能を調べよう。 脳は心を宿し、意識を作り出した。 人間の脳は神経回路網を用いて、 外部の入力からその先を素早く予測する。 プレディクションである。しかしそれだけではない。 重要なことは意識に上らせ、 他の多くの情報を統合しながらじっくりと吟味する。 これがポストディクションである。今の人工知能にはこれがない。

 ロボット(人工知能)は心を持つだろうか。人は、 社会生活を行う進化の過程で心を発展させ、共感を持つに至った。 しかし心は不条理である。ロボット(人工知能)は、 人の心の働きを理解し、それに合わせることはできる。しかし、 ロボットは合理的、論理的で、 それ自身が悲しんだり喜んだりする振りはできても、 そのような無駄はしない。

 これから、人工知能が人類の知能を超え、 人間を不要のものとするシンギュラリティが訪れるのか、 その前に人類の文明は何をしなければいけないのかを考えよう。

主催
シンギュラリティサロン

共催
株式会社ブロードバンドタワー、一般社団法人ナレッジキャピタル

シンギュラリティサロン #35 乾 敏郎「感情生成の設計図:自由エネルギー原理を基礎に」

講演
2019/06/22 (土)
13:30-15:00 講演: 「感情生成の設計図:自由エネルギー原理を基礎に」
15:00-15:30 自由討論

講師 
乾 敏郎(追手門学院大学)

定員 100名(先着順・入場料無料)

講演概要
自由エネルギー原理(Free Energy Principle)は、知覚・認知・運動・注意・感情・意思決定・思考をつなぐ大統一理論である(Friston, 2010; 乾, 2018, 2019)。自由エネルギー最小化は、Helmholtzの無意識的推論とFristonの能動的推論によって実現される。前者は知覚の、後者は運動の原理である。
本講演では、まず感情が生まれる脳-身体アーキテクチャーについて説明する。ついで自由エネルギー原理によっていかに感情という機能が説明できるかを考察する。

文献
Friston, K. (2010) The free-energy principle: a unified brain theory? Nature Reviews Neuroscience, 11, 127-138.
乾 敏郎(2018)感情とはそもそも何なのか-現代科学で読み解く感情のしくみと障害-,ミネルヴァ書房
乾 敏郎(2019)自由エネルギー原理 -環境との相即不離の主観理論- 認知科学(執筆中)

主催
シンギュラリティサロン

共催
株式会社ブロードバンドタワー、一般社団法人ナレッジキャピタル

シンギュラリティサロン#34(東京第31回) 吉田 正俊「自由エネルギー原理と視覚的意識」

名称: シンギュラリティサロン @東京 第 31 回公開講演会
日時: 2019年6月8日(土) 1:30pm 〜 4:00pm
会場: 大手町サンケイプラザ 3 階
主催: シンギュラリティサロン
共催: 株式会社ブロードバンドタワー
講師: 吉田 正俊 (生理学研究所 認知行動発達機構研究部門 助教)
演題: 『自由エネルギー原理と視覚的意識』

講演概要:
フリストンの自由エネルギー原理では、外界に関する生成モデルと現在の認識から計算される変分自由エネルギーを最小化するために、1) 脳状態を変えることによって正しい認識に至る過程 (perceptual inference) と 2) 行動によって感覚入力を変えることによって曖昧さの低い認識に至る過程 (active inference) の二つを組み合わせていると考える。
本講演の前半では自由エネルギー原理について、我々が視線を移動させながら視覚像を構築してゆく過程を例にとって、簡単な説明を試みる。本講演の後半では、このようにして理解した自由エネルギー原理を元にして「自由エネルギー原理と現象学に基づいた意識理論」を提唱する。この理論において意識とは、 自由エネルギー原理における推測と生成モデルとを照合するプロセスそのものであり、イマココでの外界についての推測と非明示的な前提条件の集合である生成モデルとが一体になって意識を作り上げている。この考えはフッサール現象学における意識の構造についての知見と整合的である。
定員: 100名
入場料: 無料
聴講者: 小林 秀章 (記)
https://peatix.com/event/676133
続きを読む シンギュラリティサロン#34(東京第31回) 吉田 正俊「自由エネルギー原理と視覚的意識」

シンギュラリティサロン #33「意識をめぐる大冒険」(ジャパンスケプティクス共同開催)

概要
2019/03/10
13:30 – 14:10 講演1「意識は情報かアルゴリズムか? -20年後の意識のアップロードに向けて-」
渡辺 正峰氏 (東京大学大学院工学系研究科 准教授)

14:10 – 14:50 講演2「意識の理論を構築するための共通のフレームワーク」
大泉匡史 (株式会社アラヤ 基礎研究グループ マネージャー)

14:50 – 15:00 休憩
15: 00-15:40 パネルディスカッション「意識をめぐる大冒険(仮題)」

 登壇者
  渡辺正峰
  大泉匡史
  小林秀章 (セーラー服おじさん)

 モデレータ
  松田卓也(神戸大学名誉教授、シンギュラリティサロン主宰)

15:40 – 16:00 交流会

定員 100名(先着順・入場料無料)

講演概要

講演1「意識は情報かアルゴリズムか? -20年後の意識のアップロードに向けて-」
渡辺 正峰氏 (東京大学大学院工学系研究科 准教授)

 意識は一体何から生まれるのか。哲学者のチャーマーズは、すべての情報が意識を生む(「情報の二相理論」)と主張し、神経科学者のトノーニは、統合された情報にのみが意識を生む(「統合情報理論」)と主張している。最大の問題は、これら「意識の本質」にまつわる仮説を検証する術を我々が持たないことだ。素直に考えれば、意識を有する脳を用いて仮説群を検証すべきところだが[1,2]、生体である宿命から、仮説検証に必要な「意識の本質」の抽出が許されない。無理に抽出しようとすれば、今度は脳が死んでしまう。

 この壁を乗り越えるべく、機械へと意識を宿す試み、すなわち、アナリシス・バイ・シンセシスによって意識の本質へと迫る手法を取り上げる。ここで必須となるのは、機械の意識を検証する手法である。空気がなければ飛行機械の開発がままならないように、人工意識の検証法なくして、アナリシス・バイ・シンセシスによる意識の探求は成立しない。

 そこで、機械の意識を検証する手法として「人工意識の脳接続主観テスト」[3,4]を提案する。当該機械を自らの脳に接続することにより、自らの意識をもって機械の意識を”味わう”。ただし、人工網膜や人工鼓膜によっても感覚意識体験が生じてしまうように、単に脳に機械を接続すればよいというものではない。テストの可否を握るのは、機械に意識が宿った場合にのみ、脳との間で感覚意識体験が共有される機械と脳の接続のあり方だ。ヒントとなるのは、ロジャー・スペリーによって二つの意識が共存することが示された分離脳である。

 また「人工意識の脳接続主観テスト」を思考実験として用いることにより、情報に意識が宿るとするこれまでの仮説群の問題点を指摘し、その代案として、神経アルゴリズム(生成モデル)が意識を生むとする自身の仮説[5]を紹介する。

 最後に意識の機械への移植について議論する。上記、主観テストの方法を用いて機械と脳を接続し、いくつかの仮定が正しかったなら、20年後の意識のアップロードも視野に入ってくる。

[1] Watanabe, M., K. Cheng, Y. Murayama, K. Ueno, T. Asamizuya, K.
Tanaka and N. Logothetis (2011). “Attention but not awareness
modulates the BOLD signal in the human V1 during binocular
suppression.” Science 334(6057): 829-831.
[2] Watanabe, M.; Nagaoka, S.; Kirchberger, L.; Poyraz, E.; Lowe, S.;
Uysal, B.; Vaiceliunaite, A.; Totah, N.; Logothetis, N.; Busse, L. et
al.: Mouse primary visual cortex in not part of the reverberant neural
circuitry critical for visual perception. (in revision)
[3] Watanabe, M. (2014). “A Turing test for visual qualia: an
experimental method to test various hypotheses on consciousness.” Talk
presented at Towards a Science of Consciousness 21-26 April 2014,
Tucson: online abstract 124
[4] 渡辺正峰(2017)「脳の意識 機械の意識」中央公論新社
[5] 渡辺正峰(2010)「意識」『イラストレクチャー 認知神経科学―心理学と脳科学が解くこころの仕組み』村上郁也編、オーム社

講演2「意識の理論を構築するための共通のフレームワーク」
大泉匡史 (株式会社アラヤ 基礎研究グループ マネージャー)

意識の科学的研究が本格的に始まったのは1990年代頃からで、 神経科学者を中心に様々な実験的知見が集められ、意識研究は大き く前進した。しかしながら、未だに意識の本質的な理解には程遠い 状況である。この状況を打破するためには、 実験事実の蓄積だけではなく、実験事実を統一的に説明し、さらに 新しい現象を予測する力のある理論が必要である。現在、様々な意 識の理論が提唱されているが、そもそも意識の理論とはどのように 構築されるべきかに関して、共通のフレームワークが不足している と思われる。本講演では、意識の統合情報理論を一つの雛形として 考え、意識の理論を構築するための共通のフレームワークを提案す る。このフレームワークを元にして、意識の理論は今後どのように 構築され、検証されるべきか、そして理論の果たすべき役割とは何 かを議論する。最後に、意識の理論を元にして、 人間以外の動物の意識、あるいは機械の意識はどう評価されるべき かを検討する。

主催
シンギュラリティサロン
ジャパンスケプティクス

共催

株式会社ブロードバンドタワー、一般社団法人ナレッジキャピタル

シンギュラリティサロン #32 浅田 稔「人工痛覚回路はシンギュラリティか?」

講演
2018/12/01
13:30-15:00 講演: 「人工痛覚回路はシンギュラリティか?」
15:00-15:30 自由討論

講師 
浅田 稔 (大阪大学大学院工学研究科 教授)

定員 100名(先着順・入場料無料)

講演概要
近年の深層学習に代表される人工知能の興隆はめざましく, 人間のあらゆる能力を超えていく勢いである.しかしながら, BigData, GPGPUに代表される巨大なデータ量と莫大な計算資源の支援が必要で, 量で圧倒する力づくの感がある.これに対し,人間は,エネルギー効率( これは他の種と共有)がよいばかりでなく,量と異なる質の問題,すなわち「心」 の課題をもっており,身体性や社会性が大きなカギであり. 現状の深層学習が不得意な部分である.本講演では,人工システムに痛覚回路を埋め込むことで, 痛みの感覚,他者の痛みへの共感,さらにモラル, 倫理感へと発展する思考実験を検討し,来るべき共生社会のありかたを議論する.

主催
シンギュラリティサロン

共催
株式会社ブロードバンドタワー、一般社団法人ナレッジキャピタル