第1回シンギュラリティシンポジウム ②「AIコンタクトセンターに見る未来」石田正樹

まずはなぜAIでビジネスをやるのかということについてお話したいと思います。ここ20年間のGDPの伸び率を他国と比較してみると、日本だけがマイナス成長です。これは日本が技術革新ができていない、生産性が向上していないという事を示しています。他のアジア諸国では15歳から64歳までの生産年齢人口が増加しているのに比べ、日本は2006年をピークに7年連続減少、27万人減少しています。つまり生産する人がいないのです。技術革新をするしか日本の未来がないのです。

我々は今年の10月にサービス分野でAIの技術を使ってロボットと人間が共存するAIコンタクトセンターを作ろうと考えています。テレマ事業は日本で1,5兆円の市場があるのですが、人がいない、仕事を覚えられない、即ち自動化するしか道がないのです。
ガートナーのハイプサイクルにおいて音声認識はアメリカでは今や普及期の技術になっていますが、日本のコールセンターではまだその技術を取り入れていません。20年遅れです。

英オックスフォード大学オズボーン准教授の「10年で無くなる職業」の筆頭に電話オペレーターの仕事が上げられています。小説「フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち」(マイケル・ルイス著)という本があります。ヴァーチュファイナンシャルという会社はこうした株の売買を自動でやっていますが、現在世界225の取引所で上場されています。昔、株の取引は「場立ち」といって仲買人が人手で取引をしていましたが、今自動化が当たり前になっています。私たちはこれをコンタクトセンターでやろうとしています。

AIコンタクトセンターでは、お客様からの電話を音声認識で受け、何を言っているかを理解して必要な情報をやり取りします。日本語テキストを解析し、Deep Learning的な処理等複雑なアルゴリズムを既に私たちのサーバーでは装備しており、AIに学習させています。情報はテキストで一元管理してお客様のニーズに応えます。
これまでのコンタクトセンターでは、24時間対応でなく、本人確認など煩わしい手続きが必要でしたが、AIオペレーターは24時間対応可能で、電話のように話し中ということもありません。名前・生年月日・電話番号プラス声紋の4つの認証で送金などは問題なくできます。AIを使って今後オペレーターの人件費をどんどん省いていこうと考えています。

自動運転の頭脳は、センサーから入るミリ波レーダーやレーダースキャナーやカメラから認知したデータを判断、アクセルやブレーキ、ハンドルなどの操作を指示します。AIコンタクトセンターの頭脳では、音声認識や感情分析で認知したデータをテキスト解析し、判断、音声合成やCRM連携操作を指示します。
とは言え、自動運転同様いきなりやるのは怖いというお客様に対しては、お試しの席をいくつかご用意しています。いきなりすべてを自動でできるわけではありません。

自動車のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)自動走行システムの研究開発計画によれば、レベル1は安全運転支援システム、レベル2では加速・操舵・制動複数を同時に自動車が行う状態、レベル3では加速・操舵・制動すべてを自動車が実施、緊急時のみドライバーが対応する状態(レベル2,3は高度運転支援システム)、レベル4では加速・操舵・制動すべてをドライバー以外実施、ドライバーが全く関与しない状態(完全自動走行システム)となっています。私たちはレベル3までは人間がしっかり握っていないといけないと認識しています。先日のテスラの事故はレベル2で手放してしまったことでおこってしまいました。手放してはいけない段階ではしっかりこちらが管理してお客様に提案しています。

豊田佐吉はもともと人手でやっていた紡績を、蒸気などを利用し自動織機を発明しましたが、いまだに自動織機の世界では世界一の技術を誇っています。
是非私たちも歴史に学び、日本を新しい技術の力で元気にしていきたいと考えています。

※ 講演当時は「AIコンタクトセンター」と呼んでいましたが、「RPAセンター」を正式名称としました。Robotic Process Automationが由来です。

株式会社AIスクエア 石田正樹

(報告:大久保香織)

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*講演資料: